さて、前回、家探しを始めたころの私にとって、注文住宅といえば「3000万円」というなんとなくの相場観があったわけですが、それは、私の実家の田舎のほうで、周囲で新築で家を建てるときの相場として、何度も耳にしていた金額だったからです。実家は関西の田舎にあり、そのエリアの地価は当然にいま住んでいる首都圏エリアよりずっと安く、1000万円以下で十分に広い土地が手に入ります(最近の地価動静はよく知らないのでわかりませんが、それほど変わっていないんじゃないかと思います)。そんな「広い土地」に、和風の立派な家を注文住宅で建てるのが、実家の方ではごく当たり前の「新築住宅の建築」の風景であり、逆に言えばそれ以外の選択肢は事実上なかったといえるように思います。うちのほうでも、駅に近くて多少は市街化されたエリアだと建売もそこそこあるんですが、駅から車でしばらく走るような実家近辺では、土地は土地として売られているのが当たり前で、建売になっているほうがむしろレアだったんですね。「別の選択肢が事実上ない」ということのもう1つの影の理由は、「近所への見栄」ということもあったようです。うちの近所では、ある特定のハウスメーカーの影響力が非常に強く、新築の家はどこもかしこもそのハウスメーカーの注文住宅でした。そのハウスメーカーの坪単価はかなり高いのですが、どうも一度耳にはさんだところによると、そこではない、もっと安いハウスメーカーでお願いすると、近所からバカにされるということが実際にあったようです(これまた、私の学生のころの古い話ですので、最近は変わっているとは思いますが)。「近所に恥ずかしくない家」というコンセプトは、家のスペックや装備にも影響してきます。屋根は必ず日本瓦で寄棟造、立派な玄関、高い塀囲いと日本庭園、屋根付きカーポート、総二階を避けた立体的な造形、そういった家を建てて初めて、周囲からあそこは「ちゃんとした家」を建てた、と評価されるという、まあ都会ではあまり考えられないような風潮がありました。そして、そういう家を建てるとなると、どうしても最低ラインで建物3000万円、実際にはそこから(豪華な装備分だけ)どんどん高くなっていく、といったことがあったわけです。また、そういった豪華設備を抜きにしても、実家のエリアで建てられていた建物の延面積がかなり大きかったということも、当時聞いていた予算総額が大きかった理由ではありました。一般的に、注文住宅というのは「坪単価」によって建築金額のベースが定められていて、その部分については建築コストは延床面積に対して単純に比例関係にあります。ですから延床面積50坪の家であれば、単純計算で延床面積25坪の家の倍してもおかしくない(実際には広くなると多少は割安になりますが)わけで、50坪で3000万円と聞いて「高い」と感じても、25坪で1500万円ならむしろ「安い」と感じたりもするわけで、私の中の「注文住宅=3000万円」というイメージは、いずれにしてもあまり正確なものではなかったということになります。ともあれ、私自身は当初、「注文住宅は高すぎて到底予算内では手が届かない」と考え、検討の対象にすら入れていませんでした。この状況を変えたのが、建売住宅を探してとある不動産仲介業者の店を訪れたときのなにげない会話でした。