僕にとって忘れた頃にやってくる恐ろしいもののひとつに腰痛がある。
先週の月曜には、エアコンを窓に取り付けている最中から痛み出してしまった。こちらのエアコンは窓に取り付けるタイプが主流で、室外機も要らず、そんなに重たいものでは無いのだが、狭い空間で作業をしたのが悪かったようだ。
僕の腰には大学生の頃から椎間板ヘルニアがあり、普段の生活では支障は無いのだが、こういった持ち上げる作業や、疲れている時にヘルニアに良く無い姿勢をとってしまうと痛みに悩まされることになるのだった。
20歳の自分は、何でも出来ると思っていたのか、ロックバンドのツアーで信じられない重さのアンプ2台を一人で持って階段を上がったり、狂ったように重いベースをストラップから下げてステージを飛び跳ねていたのだから仕方が無い。
歳を追うごとに、昔、自分の腰にした仕打ちが返ってくるようだ。
楽器の性質上かヘルニアを抱えている人はベース・プレイヤーにはとても多く、ある日突然歩けなくなってしまっただとか、下半身から肩にかけて痺れがとれなくなったなどの恐ろしい話を聞くのだ。
もっともこうした症状までいってしまった場合は、選択の余地なく手術ということになるのだが、僕のような症状だとヘルニアが出て来たり、ひっこんだりということで、手術をするまででもなく、逆に手術をしても100パーセント改善するかは保証出来ないと、医師は言う。
フィジカル・セラピーに行った時は、今の段階ではうまく付き合ってゆくしか無いというとで、周りの筋肉を強くすることと、持っているヘルニアの方向に悪いエクササイズはしない事を教えて頂いた。
水泳も良いということで、5年程前から毎朝のように泳いで、おじいさんと同じようなエクササイズをしてはいるのだが、それでも油断しているとギクリと来てしまうのだった。
「ホント、爆弾を抱えているようなものだよね。」同じ腰痛の悩みを持つ友人は言う。本当にその通りで、治ったかのように調子の良い時が続いていると、「いやいや、あなたはヘルニアがあるんで〜す」と言わんばかりに痛みが襲って来る。
腰痛の辛いところは、痛みは勿論だが、その痛みで正気が抜けたようになってしまうところ。腰はすべての動作の中心になっているのが、腰を痛めると良くわかる。腰を守るために肩に力が入り、手を前に出してお皿を洗うことすら出来なくなってしまうのだ。
つまり、どんな動作をするにも痛みの恐怖があり、リハビリ中のお年寄りのようなスピードで動くことになる。
腰を休ませるのも大切と言われたが、僕の場合は横になってしまうと逆に辛くなってしまうので、座るのと立つのを5分おきくらいに続けて、ちょっと痛くても歩き回るようにしている。
しかしながら、風邪をひいても気力で治すとか、熱があっても会社に行くというのとはちょっと違った精神力が必要で、痛くても勇気をもって出来る事を続けるしかないという感じか。
自分がこういった状態になった時に思うのは、よくガンの克服体験記とかに出てくる方々のお話。生死がかかっている状況とはいえ、その精神力は相当なものなのだろうなと想像する。
僕にはそういった状況を切り抜ける力があるだろうか?
そんな時はもしかすると、べンが答えを出してくれるのかもしれない。
まる1週間が経って、すっかり普通の生活に戻ることが出来たが、40代前半にして、腰に気をつける生活は気の抜けないものとなりそうだ。