コミュニケーション

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Nice!

ekuboくんからメールが届きました。1月からの自立登校(現在養護学校中学部3年生、4月から高等部)に向けて準備を進めてきたekuboくん。自分用の携帯電話も買ってもらって準備万端。いよいよメール開通です。記念すべき初メール↓ekuboくん:「ふつう型のインフルエンザでな(亡)くなる人はどこにいるんですか?」いきなり、来ました。不安の質問メールですか・・・(((( ;゚д゚)))私:「ふつう型のインフルエンザは予防できますから なくなる人はいませんよ。」不安はすぐに解消すべし!!速攻で返信です。3分後にメール第2便到着。ekuboくん:「良いことを教えてくれてありがとう。これからも安全に予防接種ができますね。」私:「予防できるから安心ですね(^∀^)元気で冬休みを楽しんでね」どうやら、季節性インフルエンザの予防注射を前にして、インフルエンザのことが心配になってしまったようです(*ekuboくんママにメールして確認)。二日後の夕方、メールが来ました。ekuboくん:「昼の3時から○○病院に行って予防接種をしました。無事、抗体ができました。」私:「予防接種がんばりましたね(^_^)これで健康でいられますから安心ですね。」絵文字も顔文字もないストレートなメール。でも、おばちゃんにとっては、涙が出るほど嬉しい嬉しいメールです。ekuboくんから届いたメールを見ながら、ジーンとしています。ekuboくんを自閉症と診断した日から、ekuboくんとコミュニケーションできる日が来ることをどれほど待ち望み、祈ったことでしょう。言葉が出ますように・・・おばちゃんと呼んでほしい・・・。言葉を獲得し、文字を覚え、電話もファックスもメールも使えるようになったなんて、夢のようです。何とかekuboくんとコミュニケーションしたい!!ファックスでお手紙のやりとりができるんだよ、ということを覚えてほしくて、ファックスの前に待ち構えて送受信を繰り返した時もありました。何か心配になったときには、繰り返し繰り返し「視覚的」にわかりやすい答えを送る工夫が必要でした。不安なことは、質問したり教えてもらうと解決できるから安心なんだよ、ということもいろんな方法でやりとりを繰り返しました。ekuboくんからの初メールは不安解消の直球勝負でしたが、おばちゃんにはそれが嬉しいことなのです。自分の不安を自覚して、それを解消するためにだれかに質問できること。これができたら、どんなに安心でしょう。自閉症の子どもたちは常に不安でいっぱいなのです。わからない言葉だらけの理解できない文化の異国に放り込まれた状態で、だれにも助けてもらえないとしたら・・・不安を打ち消すことができない時、自閉症の子どもたちのこだわりはどんどん強くなり、ひどいパニックを起こしてしまいます。これまでekuboくんを見てきて感じるのは、自閉症の子どもたちにはひとかけらの不安も与えてはいけないということです。彼らには「絶対」の安心など存在しませんが、それでも「大丈夫だよ」「安心していいよ」とわかりやすい形で伝え続けてあげることが大事なのです。ekuboくんが「おばちゃんに聞いたら安心!」と思ってメールを送ってくれたことが、私にとっては何よりも嬉しいことです。そして、最終的なコミュニケーションの目標がようやく完成したのだと思うと感慨無量です。そのうえ、質問に応えてもらったことには律儀にお礼のメールを送ってくれたのにも感心(ママにお礼のメールを送るマナーを教わったそうです)!!礼儀正しい少年のメールのなんとすがすがしいことでしょう。後日、予防接種の報告までしてくれる真面目さにもしみじみ感動~。ekuboくんありがとう。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日々の診療で思うことは、時間をかけて積み重ねる小さなステップや努力の大切さです。障害のある子どもの子育ては、苦労の連続。小さなステップを乗り越えるのに何年もかかることもあるでしょう。どのようにして子どもを育て導いていくか…たくさんの苦労があるとしても、それでも親や家族にしかできないこと、親や家族だからこそできることがきっとあると思います。どんな小さな不安のかけらもすぐに取り除いてあげること。たくさんほめてあげること。愛情深く、丁寧に育むこと。当たり前だけれど大切なことをekuboくんを見守りながら改めて感じています。今年もあとわずかですね。更新の滞りがちな「えくぼ通信」にお立ち寄り下さいました皆さん、どうもありがとうございました。どうかよいお年をお迎えください。