家庭教師。その2

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Nice!

続き。S子ちゃんの性格は、私とよく似ていました。とても無口な子で、聞かれたことに答えるのが精一杯で、自分から発言したことは一度もありませんでした。無表情だし、挨拶も全くしません。S子ちゃんのお母さんが「御挨拶しなさい」と促しても黙っているだけでした。お母さんがいつも「無愛想でスミマセン」と謝ってましたが、私は別に気にしていませんでした。自分もそうだから。ちなみに他にも、曖昧な指示が苦手だったり、予定の変更を嫌がったり、「物を真っ直ぐに並べる」というこだわりを持っていたり・・私と同じ特徴がいくつもありました。今思えばアスペっぽい?かも。当時、私は自分がアスペだとは知りませんでしたが、少数派だという自覚はありました。その少数派である私と性格が似ているのはとても珍しいことなので、S子ちゃんの事は凄く印象に残っているのです。さて。そんなS子ちゃんと、1年間、一緒に勉強をしました。私以上に、喋ることがとても苦手な子でした。分からないところがあっても「分からない」と言うことが出来ないし、質問も全くしてきませんでした。 こういう時、学校の先生は「分からないことは聞きなさい」「積極的に質問しなさい」と言いますよね。 でも私は、喋るのが苦手な子に、無理に喋らせることはしませんでした。 ただ、分からないことをそのままにしておくと後々困るので、理解度の確認は必要です。 S子ちゃんは喋るのが苦手だけど、自分の親と話すのは全然平気だったようです。 だからいつも、親御さんを通して理解度の確認をしていました。 「どこが分かっていて、どこが分かっていないか」ということを、S子ちゃんが親に伝え、そして親が私に伝えるという・・ 「中学生にもなって、親に代弁してもらうなんておかしい。普通は自分で言えるはず。」と思う人もいるかもしれませんが、私はそうは思いませんでした。 私はここでは、「普通」という概念を捨てていました。 私は当時、発達障害のことは何も知らなかったけど、「普通は~できるはず」という言葉で一括りにされるのを嫌がる人がいることは知っていました。自分がそうであったように。 長くなったので続きは次回に。