行ってしまったバスの後

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Nice!

小さな頃からあいまいだった、IとYOUの関係はベンの言葉の理解にとっての大きな難関のようで、今も続いている状態だ。「Can I come with you ?」 (一緒に行ってもいい?)は頻繁に使われるフレーズだが、ベンは「Can I come with me ?」と言ってしまう。確かに、「私」と「あなた」の関係は、主となる人がいてこそ成り立っているために主となる人が常に変わってしまい、He や she または名前のように普遍のものではないところに問題がある。学校のバスに乗り遅れたベンを連れて、天気のよい朝の街を2人で歩く。雨上がりの清々しさも手伝ってか、ベンがナイスな事を言ってくれた。「Dad, I love to walk to school with me」? 「ベン、meじゃなくてyouだろ?」と言うと即座に言い直すのだが、これだけの年数を間違え続けているということは、よほど頑固な論理なのだろうと察する。もしかするとホントにyou無くてIで、ただ自分のことだけを言っているだけだったりするかも知れないなとも思ったこともあるが、指摘をすれば言い直すのでそういうことでもなさそうだ。せっかく相手に対して良い事を言っているのに間違っていてはもったいない。名前と照会して説明しようと思い、「ベン、Iはベン、Youはガクなんだよ。もしダディが言ったらIはガク、Youはベンなんだ。」と力説すると「OK Dad」といつもの返事だが、考えて理解した様子でもない。今回もベンが自分で理解するのを待つことになりそうだが、その目の奥には可能性の光も一杯入っていて、そんなナイスな一言を言ってくれるベンを愛おしく思うのであった。春風にのった雨上がりの街の匂いは緑色で一杯だった。