地頭力だそうだ

24
Nice!

企業の採用試験において「地頭力」が重視されはじめていると、NHKの「クローズアップ現代」4月3日放送で報じられた。地頭力についてはNHKに先だってbogusnewsに詳細に報じられていたので興味はあったのだが、現実はbogusnewsよりもばかばかしいものだと感じられた。「5大陸の中でどれか一つを消さなければならないとしたらどれを消しますか、その理由は何ですか」とか、「富士山を移動させるにはどうしますか:トラックとパワーショベルを使う前提で」とかいう、明らかに正解がない設問に答えられるのが、企業の求める「地頭力」なんだそうだ。ちなみに1問目はさすがに政治的影響を考慮してか解答例は示されずスルーされたが、2問目の答えはトラックの積載量から算出して300億回走らせるというものだった。はあ。さきのグーグルの採用試験の問題ならともかくも、この例題のナンセンスさは何だと呆れた。大陸を消すって、大きめの火山が一発噴火しただけで気象は地球規模で変動するのに、一大陸を消して他が無事に残るわけがあるまい。最初に消えるか余波を喰らって滅ぶかの二者択一なのに、どれを消しますかもあるまい。「日本沈没」を第二部まで読むとよい。富士山を動かすって、あれは活火山である。山塊そっくり平地になるまで削っても後から後から吹き出てくるに決まっている。現在の山を構成する岩や土砂を他所に盛り上げたところで、現在地に新しく火山が盛り上がってきたら、その後に富士山と呼ばれるのは、たいがい現在地に新しくできた山のほうだろう。「泣く子と地頭には勝てぬ」とは、昔の人はよく言ったものだと思う。大陸を消すとか富士山を動かすとか、まさに泣く子か地頭的な無理筋の発想である。こんな浅薄な設問で測定できるのは求職者の教養や思考力の深さではあるまい。求職者についてはどれくらい無根拠な法螺を平気で吹けるかであり、募集側についてはどれくらい無理筋な要求を他に課す企業であるかということだろう。NHKの特集でも、糸井重里氏の「企業も必死ですね」というコメントが秀逸であった。私も職業柄、地頭はともかく泣く子の相手はずいぶんしてきたつもりだが、対戦相手としてはかなり手強い。地頭を採用するのに失敗した企業は、つぎはうちのNICUの泣く子たちに給料をくれることを考えてもいいのではないかと思う。大陸を消すならどれとか富士山を移動させるにはとかいう問答で採用されたような面々くらいには世の中の役に立つだろう。とは言いながら私も答えを考えてみたのだが。1問目、大陸の中で消すならやっぱりオーストラリアでしょう。今後は島と呼ぶことにすれば大陸がひとつ消えます。2問目、山頂の一番高いところを削ります。削った土は噴火口を半周したくらいの場所に盛り上げればなお宜しいでしょう。山頂の位置が動けば地図上では山が動いたことになるのではないでしょうか。しょせん地頭でも泣く子でもない私にはこれくらいしか思いつかないが。こんなんで企業に採用されてもオフィスでは椅子ではなく座布団を重ねた上に座らされて仕事することになるかもしれんね。成績に応じて座布団が増えたり減ったりして。