勝間先生を猿まねすると脳がフリーズするよというおはなし

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Nice!

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法勝間 和代 / / ダイヤモンド社ISBN : 4478002037スコア選択: ※※※※やっぱりネタにして笑った以上は読んでなきゃまずいでしょ、という気持ちはあったのだが、近所の書店にようやく入荷されたので買ってきた。医学書とかアマゾンで買うんですけどね。なんとはなく、本書は買う前に実物を見てみたかった。実物を見て、買おうと思ったのは、著者勝間和代先生の電脳化ぶりに感銘を受けてである。GPSつきの自転車を駆る著者近影が掲載されているが、タチコマに乗った草薙素子(@攻殻機動隊)を彷彿とさせる。じっさいにマイクロマシン技術をもちいて脳と電子機器を(つまりはネットを)直結する電脳化技術が開発された暁には、まっさきに導入するのはこういう人物なんだろうなと思う。本書が売れる理由の第一はむろん著者の実生活での実績なんだろう。0番目に著者の文章の明晰さがあるんだろうけど、売れる本としてそれはあまりに当然のことで。それは多くの人に言及されていることだし、いちおう敬意を表して言及しておくが私ごときが深入りすることでもない。第二の理由は読者のお買い物衝動に火をつけ、しかも正当化してくれるということだと思う。要するに本書はとっても高度な通販カタログなんだ。一流の高価な商品がずらっと並んでいるけれど(レッツノート3台使い回しとか11万円の速読講座とか)、それを推薦する人の実績が凄いから、通販につきもののいかがわしさが感じられない。読むにつけ推薦に応じて買うにつけ、通販につきものの罪悪感がない。文章が明晰だし、著者の実績からして選択眼に疑問の持ちようがなしで、以前からこんなの欲しかったんだよなという急所をピンポイントに突いてくる。初めて見る商品でも「以前からこんなの欲しかった」と思わせられるところなど、内田樹先生が武道の達人に関して述べられるところの「先の先」をとる格好である。我々凡人は勝間先生の魔眼に魅入られるかのように、あらがいようもなく本書に見入り、ふと気がつけば通販サイトに入力するためにクレジットカードの番号を確かめているということになる。フリーズする脳―思考が止まる、言葉に詰まる (生活人新書)築山 節 / / 日本放送出版協会ISBN : 4140881631スコア選択: ※※※※勝間先生の本といっしょに買ってきて、続けて読んだ。この手のタイトルには珍しく、けれん味や「と」の雰囲気のない良書だと思った。偏った脳の使い方により、あたかもフリーズしたように思考が止まるという症状をあつかった本である。みょうに指示代名詞がおおくて固有名詞が出なくなるとか、細部にこだわって全体が見えなくなるとか、人の話を聞いてても内容が頭を素通しになってるとか。自覚するところの多い本で、読んでいて慄然としないでもなかった。なにより、おおいに納得しつつ読んだつもりの本の内容を、こうして読後感を書こうとしてもうまくまとめられないってのはどうなんだ。私の頭もフリーズすることの多いあたまなんだろうか。それとも文章が下手なだけか?どっちも嫌だな。勝間先生の本と並べて書くのは、単に同じ日に買って読んだというだけではなく、両書に共通点があるように思えたからだが。勝間先生も、ノウハウを求めるばかりで本質を理解しようとしない・自分で工夫しようとしない、と周囲に対して苦言を(ちらっと)呈しておられるが、勝間先生の一連の本をノウハウだけ真似しようとしても、行き着く先は築山先生のおっしゃるところの「フリーズする脳」だろうよと思う。そんな末路を想起させる症例が築山先生の本に載っているのが興味深かった。おそらく、このお二人の理想とするところにはかなりな共通点があると思う。それをお二人以上の明瞭さでここにまとめる筆力がないのが残念だが。読者諸賢の寛恕を請う次第である。警句的に言えば、勝間先生を猿まねすると脳がフリーズするらしいぞ、という結論。ほんらい医学書や小児科医療に役立つ本を読んで勉強するべき時間を何を読んで潰しとるのか、というときにつけるタグ「またつまらぬものを読んでしまった」を、両先生への敬意をこめてつけさせていただく。