内田樹先生がついに医療崩壊について御言及である

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Nice!

Tokyo Boogie Woogie (内田樹の研究室)において、内田先生が医療崩壊に触れておられる。先生の慧眼には常々尊敬の念を禁じ得ないものであるが、今回のご発言はいささか遅きに失した感がある。今現場にふみとどまって身をすり減らしているいる医師たちをどう支援するか。それが行政もメディアも医療の受益者である私たちにとっても喫緊の課題であるはずだが、そういう考え方をする人はきわめて少ない。そういう考え方をする人は極めて少ないのだそうだ。先生ご自身が今さらお気づきになったからって他の人まで認識が足りなかったことにしてしまうのはどうかと思うのだが。それって先生が戒めておられるところの、「知らない」ための勤勉な努力ってやつじゃないだろうか。それとも、さいきん読売はともかくも朝日でさえも医療崩壊の特集記事を連載し始めているのを読んで、だいぶ多くの人に医療崩壊に関する危機感が共有されてきて慶賀の至りと思っていたのは、私の現状認識が甘いのだろうか。内田先生は毎日や産経をご購読だというだけなのかな。これまで、内田先生のブログには、いまどきの若い奴らはやりがいのある仕事とやらばっかり求めてけしからんとか、仕事のリターンが自分自身に返ることを求めるのではなく自分の仕事が全体の利益になることを喜びとせねばならんとか、まともなシステムは構成員全体の20パーセントほどの人数が働いていれば回るものだとか、いろいろと勤労に関するご高説が数多く掲載されてきた。当直で疲れた頭には、内田先生のそういうご高説は、「今現場にふみとどまって身をすりへらしている医師たち」に負担を押しつけるのに都合の良い理屈としか読めなかった。身も蓋もなく言えば、「コンビニ受診だなんてぶつくさ言わんと深夜救急も徹夜で診てろよ」とか「安くて定額制の当直手当も無給呼び出しもブーたれんと夜中の帝切くらい3件でも4件でもやれよ」とか「おめーら一部が過労死して全体が回るのがフツーなシステムなんだよ分ってんのかよこの世間知らずどもめが」とかいう声が、内田先生の声に重なって、かのブログの紙背から聞こえてたのだが。先生と同世代な日医の偉いさんのようにも聞こえる声で。その内田先生にいまさら支援云々言われてもねえと思う。せめて我が身を振り返って恥じるところがないか確認してからにしてほしいものだと思う。それもしないうちに「そういう考え方をする人はきわめて少ない」などと根拠もなく先駆者気取りをなさるのは、はた目に美しい姿ではない。社会的な影響力の大きい人だから、彼が医療崩壊を食い止めようとする側にちょっとでも与してくれたら、有り難いには違いない。良いご意見ですと誉めて煽ててこちら側へ引きずり込むのが、大人の得策なのだろうよと思う。ここで彼を批判して、それならもういいよと開き直られ従来の路線に戻られると、我々にとっては損失である。しかしまあ、釈然としないことというものも世の中にはあるものだ。とくに狭量なこどものおいしゃさんにとってはね。