アスペルガー児の療育について考える(6)

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Nice!

 <アスペルガー児の療育について考える>
 前回までの記事はこちら↓
 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回

今回の話からちょっと中身が過激化する…。

<療育の目標と現状について再び>

今回は療育の目標ということについて考えてみよう。

親(特に定型発達の)の考えることはいろいろあるようだ。

「何とか他の子と同じようにできるように…」
「あのパニックさえ起こさなければ…」
「もうちょっとガマンのできる子に…」
「お友達との問題がおこらないように…」
「もうちょっと普通の親子をしたい…」
「こんなに振り回されるのはたまらない…」
「お友達と仲良く遊んで欲しい」

まあ、いろいろあるだろうが、特に定型の親御さんが、アスペルガー児の子育て中、余裕をなくしているとつい長期的な目標を見失ってしまいがちなのは想像に難くない。

しかしここでアスペルガー児の生涯のQOL(生活の質)”だけ”を考えて療育の目標を設定するならば次のように設定できるのではないだろうか。


1 自活できるだけの能力・技能を身につけ

2 二次障害を起こさずに生涯を過ごし

3 自分で自分の環境などの調整ができるようにする

4 定型社会から排除されないで生きていけるようにする

これははっきり言って自閉者の側からしか考えていない。
親(特に定型発達者の)の気分は…悪いけどここでは無視だ。

さて、それぞれについて考えていこう。

1はまあ定型発達の子供の場合でも同じである。ただ、これ自体、認知面の問題などもあり、定型発達者のようにはいかないのでフォローが必要だろう。

2はかなり深刻な問題である。アスペルガー者の多くが思春期から青年期にかけて「うつ」や解離性障害などを起こしたりするようだ。またいじめの問題にぶち当たるケースも多く、PTSDやパーソナリティ障害を発症するケースもある。当然ないに越したことはない。

3だが、感覚過敏など自分でなかなか気づかないでイライラしたりしていたりすることも多い。逆に身体の感覚が鈍い場合もある。こだわりという名の「好み」も激しい。これらのコントロールがうまくできないとストレスの元になる。自分の感覚や特性についてしっかり自覚し、自分にフィードバックできるようにしていく必要がある。また、自分の苦手を知って対処法を確立しておく必要もあるだろう。

4もまたかなり深刻だ。社会生活を送るうえでなにかと誤解されやすいアスペルガー者である。単に表情が少ないだけでも誤解される。なにかと敵も作りやすい。なんだかんだで学校社会でいじめにあったり、実社会に出ても職場に居づらくなる例は多いし、リストラのターゲットにもなりやすい。そんなことになっては経済的自立もままならないというわけで、是非とも何とかしなければならない問題だ。

これについて「発達障害に関する理解の輪を広げよう」的な活動はそこここで広がりつつある。しかし、アスペルガー者の周りを全て理解ある人だけで固めるというのはいかにも不自然であるし、そんなことは現実的ではない。世の中善意だけで動いているのではないし、善意がかえって差別に結びつくことも少なくない。

この手の活動に熱心な人からは「そんなに周りが信用できないのか?」という声が聞こえてきそうだが、社会全体隅々までに理解が広がるまで待ってはいられないのだ。

となると、定型社会で無用な排除(と、それに伴う不利益)を受けないようにするための知識と技術(定型発達者の特性を知りそれに配慮する方法)は持っていた方がいいだろう。

このように考えていくと、療育というのは最低限就職するような年齢になるまでは必要ということになるだろう。

現状に目を戻すと、こういったニーズがありながらどれだけに対応できているのだろうかというとあまりに貧弱である。

特別支援教育制度がスタートしたとはいえ、発達障害自体の認知がまだまだの段階である。とても十分な療育をうけて育つ環境ができているとは言い難い。

早急な制度(と、内容!)の拡充を望むが、望んでいる間にも子供は成長していく。悩ましい問題だ。

<つづく>


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