番組の途中…と、違った、連載の途中ですが、ちょっと一休みして本の紹介などを。
本当のTEACCH―自分が自分であるために (学研のヒューマンケアブックス)(2006/09)内山 登紀夫商品詳細を見る
ごく単純に、タイトルに対し、「んじゃあ、偽物のTEACCHって一体?」と突っ込みを入れたくなるというのはあるのだが、それは本筋ではないのでちょっとおいておく。
自閉症のトータルサポートプログラムとして日本でも認知が広がりつつあるTEACCHだが、もともとはアメリカのノースカロライナ州で州をあげて行われている自閉症へのサポートポログラムだ。
この本はTEACCHの成り立ち、そしてノースカロライナ州でのTEACCHがどういう風に展開されているのかを知るために最適の本だと言えるだろう。
日本では構造化の部分だけが取り上げられることの多いTEACCHプログラムであるが、この本を読むと、TEACCHが成人期に至るまでのトータルサポートプログラムであること、そしてTEACCHが実はサポートプログラムであると同時に自閉症サポートに関する「理念・哲学」であることがよくわかる。
同書で挙げられているTEACCHの理念をピックアップする。
1 理論ではなく子供の観察から自閉症の特性を理解する。
2 保護者と専門家の協力。
3 治癒ではなく、子供が自分らしく地域の中で生きていけることがゴールである。
4 正確なアセスメント(評価)。
5 構造化された指導法の利用。
6 認知理論と行動理論を重視する。
7 スキルを伸ばすと同時に弱点を受け入れる。
8 ホーリスティック(全体的)な見方を重視する。
9 生涯におけるコミュニティに基礎をおいたサービス。
これを見るだけで、視覚を利用した構造化のみがTEACCHの本質でないことが理解できるであろう。
州を挙げて取り組んでいるノースカロライナ州の取り組みは日本でそのままできるものでないから、それを追いかけるはあまり意味がないといった意見もあるが、この「理念」について理解するだけでもこの書籍読む価値はあったと私は思う。
そして同時に現在のTEACCHプログラムの弱点も見えてくる。
アスペルガー児者、高機能自閉症児者の思春期から青年期へのサポート体制には、まだまだ発展の余地がありそうだということだ。
この本は特に支援者にはぜひ読んで欲しい一冊だと思う。