子供向けショーの仕事は定期的で有り難い。パーティーや結婚式での演奏が年末や、春に偏るのに対し、就学前から小学校低学年を対象にした子供向けの企画は年間を通して常に行われているからだ。
だから、国をあげてのバケーション・シーズンに入ってしまう夏場には、子供ショーはオアシスのような存在で、普段は子供に疲れ気味でも「子供よ、有り難う!共に音楽を楽しもうではないか!」といった感じで、演奏にも力が入る。
先週の木曜日はマンハッタン子供博物館でショーがあった。閉館後にある非営利団体の貸し切りとなったこのパーティ、訪れた親子を見ているとちょっとした違いに気が付いた。
白人のお父さんに黒人の娘さん。白人のお母さんにアジア系の男の子。なるほど、アダプション(養子縁組み)のサービスをしている団体だったのだと思い幸せそうな親子を見ていると、さらにもう一つの違いに気が付いた。
子供の手を引くお父さんのパートナーはお父さん、お母さんのパートナーはお母さん。同性愛の夫婦への養子を手助けする団体のパーティだったのだ。
見た目にも明白なゲイのカップルはお揃いのTシャツを着て、娘さんと楽しそうに踊る。お金持ちそうな、白人と黒人のゲイ・カップルは仕事帰りなのかブランドもののスーツに身を包み子供にも高級なドレスを着させていた。
ゲイに対してレズビアンのカップルは、見た目では全く判断出来ないからか、お母さんとしてとても自然に映る。ただ、お母さん同士が話をしているのかのように見えるのが、実は夫婦であるというだけだ。
ただ、子供の前でいちゃついたり、キスしたりという場面は無く、その辺は子供の成長の過程で制限しているのかなとも思った。
僕は本当に楽しそうな親子の光景を見て、不可能を可能にする彼らの精神に敬服すると共に、それをサポートしてくれる人達までもが存在することに、大きな安心感と希望を感じさせられていた。
マイナスをプラスにひっくり返してしまうエネルギー。
演奏が終わってベースを片付けていると、「すみません、あなたはディバッシュというバンドでプレイしていませんか?」と声をかけられた。顔を上げればそこには6年前に同性愛結婚をしたクリスティーンの姿がある。
ハドソン川を見下ろす初夏の草原で、本当に奇麗なだったクリスティーンとサラの結婚式。人づてにたまたま見に来てくれた僕のバンドを気に入ってくれ、結婚式のバンドとして雇ってくれたのだった。
「あの結婚式と音楽は決して忘れないわ」そう言ってくれる2人の前には、僕と2人のお母さんを交互に見る娘さんの姿があった。