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Nice!

例年なら子供たちが去った後には即座に日本へ帰省していたのだが、
今年は通常より遅めのキャンプに参加したため十分な時間がとれなかった事もあり日本は諦めることにした。

しかし、タイミングよくケープ•コッドというマサチューセッツ州にあ避暑地のジャズフェスティバルに参加する仕事をいただいたので、2泊2日のプチ旅行が出来る事になる。

NYから車で6時間ほどかかるケープ•コッドはニューヨーカーではなく主にボストンに住む人々のバケーションの場で、僕も今まで一度も訪れるチャンスがなかった。

シンガーのメルセデスさんはボストン出身で、彼女のファミリーが持つセカンド•ハウスがあり、そこに泊めさせていただいた。

きれいに整えられたゲストルームにはそれぞれにツインサイズのベッドが置いてあり、ホテルのようにリラックスできたのだが、彼女は四六時中、一生懸命に居心地が良いように気遣ってくれる。一週間前に初めてリハーサルをしたドラマーとピアニストも、道中や宿をともにすることで、早い時間で打ち解け合えるのだった。

コンサートは大盛況で、本当に楽しく演奏する事ができた。真心で仕事を頼んでもらえた人には、心からお返しをしたいという気持ちが大きくなって、結果的に良いサウンドに結びついているのだろう。ただ、お金のためにというのとは、ちょっと違った感覚にも思える。

音楽の演奏というのはそれほどまでに心のつながり合いがあって、たとえ初対面の人であっても長年一緒に演奏しているかのように心を通じさせることで、何倍にもサウンドを良くすることが出来るのだ。

初めて一緒に演奏しているのに、客さんから「何年間一緒にやっているのですか?」と聞かれたら、それは心のつながった演奏が出来ていたからかもしれない。

人と人とのコミュニケーションを無視して、音楽の部分だけで会話(演奏)する事ももちろん出来るが、それはそういったサウンドになっていっているようにも感じられる。

バンドの作り出すサウンドとセッションの決定的な違いは、音楽的なものと同時にこうした人間としての密なコミュニケーションが音に現れていることだろう。

だからバンドのサウンドは一度心を奪われてしまうと、どうやっても切り離せないイメージがあり、それがまた大きな魅力でもある。
ロックはバンド形態をとることが普通で、ジャズの場合はそうでない事が多いのだが、どんな場合でも「即席バンド」として瞬時にしてコネクトしたサウンドが出せればと思い描くのだった。

僕はそんな理由からか、挨拶もろくにせずに一緒に演奏しようとする人や、挨拶しても心を開かないまま演奏する人が大の苦手だ。

それはエゴであったり、恥ずかしい気持ちであったり、人間的な相性の悪さだったりと理由はそれぞれだろうが、心を開いて語りかける人の演奏というのは、技術では無いメッセージのエネルギーに満ちあふれ、細かい部分はどうでも良くなってしまうという事もある。

音楽以外の部分でも、たくさん気を遣っていただいたメルセデスさんの「バンド」は、とても良い音がしていたように思う。