久しぶりにパンを焼いてみた。そして、パンを作りながらさじ加減というものについて考えていた。パンやお菓子に関して、うまく作るためのアドバイスとして「レシピ通りに」というのが非常に多い。だが、レシピを開発する方は既存のレシピ通りにやっていないのもまた確かである。実をいうと私はパンもお菓子も結構いい加減に作るクチだ。そのために何をするかというと、まずレシピ通りに何度かつくり、毎回ある程度まともに再現できる状態になってから、レシピを変化させてつくり、配合の限界点を見極める。卵三個(正味150g)でスポンジケーキを作るとき、果たして粉の量はどこまで抑えられるか?そのためにどんな条件が必要か?とか…まあいろいろ試した。まあ、結論からいうと素人が助剤なしでやるには薄力粉60gが限界だろう、そしてその限界を実現させるには卵の安定した泡立ちと生地の柔軟性のために砂糖は90g以下に減らしてはいけないようだということがわかったのだが、それまでにたぶんスポンジを20~30台以上は焼いただろう。ここまでやると薄力粉70~110g-砂糖90~110gくらいなら、配合を適当にやってもそれなりのスポンジが焼けることがわかり、あとは気分でいいかげんにスポンジを焼くことができる。レシピ通りというのはある意味安全ではある。だが、レシピ通りにしかできない。どの範囲なら大丈夫か?というのをいろんな要素を変えて試行錯誤していくことによって脳みそに突っ込んでいくというのはなにも料理の話だけではない。「もうちょっとうまい方法ないかな?」「このセンス取り入れられないかな?」「ここをこうしてみたら?」あれこれ考え、試行錯誤するのは実は非常に日常的な行為である。お金の使い方、化粧の方法、家具の配置、部屋の模様替え、そうじや洗濯の工夫…何も試行錯誤したことがないという人は少ないだろう。多くの試行錯誤をすれば当然「イマイチ」というレベルの失敗の発生も多くなる。「あちゃー、イマイチ!」と思ったら「●●というやり方はイマイチの結果を生む」という新たに入手した情報を元に別の手を考えるというのが一般的ではないだろうか。試行錯誤が生命・身体の危険につながらないための最低限の知恵をつけておくことは必要だし、イマイチの結果が少なくするようにあらかじめある程度の情報収集してリスクを低くしておくのもいいだろう。とはいえ情報収集だけで試行錯誤をしなければ何も生み出さない。レシピ本を読んだだけで「さじ加減」ができると思う人がいたとしたらと超絶抱腹絶倒レベルの自信過剰だろう。ソーシャルスキルの獲得(そのための療育も含め)も構造は全く同じだろう。さじ加減ができるようになるには試行錯誤が必要だ。強いて違いを挙げるとするなら、人との関わりは非常に変化が多いということだろうか。同じ人に会うにしても自分の気分も相手の気分も前回と同じ状態ということはないのだから。最近、発達障害者、発達障害児の親御さん向けとおぼしきソーシャルスキルの本が増えてきた。そしてそれらは「こういう場合」→「こういう対応」というマニュアル型のものが非常に多い。これらはレシピ型ということもできる。別にこういう形のものがすべて悪いというわけではない。既成のレシピなのだから、試行錯誤して取捨選択するなり調整幅を見極めてアレンジして使えばいいだけのことだ。だが、「いろいろな方法を試しているのに今ひとつ成果が…」という声はよく耳にするし、「私に(うちの子に)使える本がない」と嘆く声もしばしば耳にする。ベストのレシピを…という気持ちはわからないでもないが、待っている間に年月は経つ。正直なところベターなアレンジを見つけるために重大リスクだけ避けてどんどん試行錯誤するほうが早道ではないかと思うことは多い。試行錯誤すればもれなく大量の失敗がついてくるが、その失敗を怖れすぎると、試行錯誤をし損なうという失敗がもれなくついてくる。なにやら禅問答のようである。…などということをパンを作りながら考えていたのだが、昨日は台所の室温が予想以上に低く、最終発酵の加温が準備していた方法(余熱中のオーブン上を利用)で思うようにできなかったので途中で急遽加温方法を変更し…というすったもんだの末に予定より30分遅れで完成したのがしたの下のパンである。プレーンな系統のパンをとーっても久しぶり(10年くらいつくってないかも)なので作るのが楽な小麦粉(ゴールデンヨット)に頼りはしたが、結構いい出来だった。何より焼きたてのパンは香りが最高!終わりよければすべてよし! ↓ゴールデンヨット:グルテン量がとても多いので膨らみよく作りやすい強力粉。
にほんブログ村↑ブログランキング参加してます。↑応援の1日1クリックを!ま、なにはともあれおひとつボチっと