【書籍】芋づる式に治そう! 栗本啓司 浅見淳子 著

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Nice!

ひさびさの書籍紹介。

自閉っ子シリーズでおなじみの花風社の新刊、「芋づる式に治そう!」。
直販で早々に入手していたのだが、まあ薄い本なのに考えさせてくれるところが多く、さてはてどこに触れようか?と迷うこと半月というわけだ。

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by ヨメレバ

身体アプローチの第二弾

この本は、「自閉っ子の心身をラクにしよう!
」という本の続編に当たる本だ。内容はというと自閉症児者にありがちな身体のトラブルに関する東洋的な見方の数々と、操体法をベースにした身体調整のユニークで簡単な方法の紹介である。花風社おなじみの対談形式なのでとっつきやすい本だ。

自閉症児者にありがちな睡眠障害の問題、身体の使い方の問題、そして季節の変わり目の不調などのメカニズムとその不調を防ぐための対策とかなり盛りだくさんな内容。

自閉症は身体障害だという視点

冒頭から少し引用する/p>

「自閉症の人は身体障害なんじゃないの?」なんて思ってしまうくらい、自閉症をはじめとする発達障害の人は身体的に困った症状をいっぱい抱えています。たとえば睡眠障害。自閉っ子の睡眠障害は手強いものがありますね…

確かに身体面は無視できないように思う。姿勢以外にも睡眠だったり疲れやすさだったり身体の硬さだったりまあいろいろある。アレルギー持ちの人も結構多いような気もする。

良く眠れてなきゃあれこれ大変だろう、うまく身体を使えてなきゃ妙な疲れもためやすいだろう。排泄がうまくコントロールしにくきゃ気分も落ち着かないだろう、汗かきにくけりゃ夏場しんどかろう…というようなことは非常にわかりやすい話であるが、疾病を部分で捉える現代医学では抜け落ちやすい視点だ。

実は思い当たるところがたくさんある。

睡眠の問題

私自身、子供の頃を思いおこすに、確実に睡眠障害だった。
物心ついた頃から寝付きは悪いし寝起きも悪い、そして寝た気がしない。布団に入って1~2時間くらい寝られないのはザラだった、あげく睡眠不足になるというコース。
たまたま若い頃に気功だの太極拳だのに出会い、寝る前にちょっと簡単な気功(スワイショウ、タントウ功、十字功)やるとすぐ寝られるようになったのだが、それらはこの本に出てくる身体アプローチの手法がよく似ている。そしてその解説を読んで、

そうか!そういうことだったのか?へえええ!

と、ひとり納得してしまったのだが、自閉症児者は身体の使い方を学びにくくできているのかも知れない。

ま、とりあえず気持ちいいし手軽である。気功とあべこべ体操(これはフェルデンクライス系)にプラスして、この本の金魚運動が寝る前メニューのラインナップに加わった。

腰と踏ん張りの問題

この本の中盤に腰と踏ん張り、頑張りに関する話が出てくるのだがこれにも思い当たる節がある。

子供の頃に何事も「腰を入れる」のが大事だというのは父からしつーこく教わっていた。たまたま父(本業は洋服職人)が空手の有段者だったので、遊び半分に時々教わっていたのだが、父に「俺を押して見ろ」と言われていくら押してもぶつかっても父がびくともしないのだ、そして動作が妙に速くて隙がない。父は細身だし大柄な人ではなかったので子供心にもかなりびっくりであった。
さらに日曜大工でのこぎりを引く動作の構えや、様々な日常の動作でも腰が入らないと力が入りにくいということや「力を抜くこと」「脇を締めること」などをこれまたしつーこく教わったりと、結構立つときや動作するときの重要ポイントをたたき込まれた感はある。

踏ん張り、頑張りやすい身体の使い方というのは様々な面で余力を持てるということに繋がるような気がする。そしてそれは身体の動きがつかみにくい自閉症児者では抜け落ちが生じやすい部分である。改善できるに越したことはない。

自閉症じゃなくても現代人の疲れにもよさそう。

現代社会では老いも若きもどうしても身体を使うことが減っている。となれば自閉症児者でなくても身体の使い方を学び損ねる可能性は高くなるだろう。調子も崩しやすくなるかもしれない。

肩こり、腰痛、不眠、季節の変わり目の不調…ちょっとした体操でスッキリできればそれに越したことはない。

自閉症児者のQOLを低くするのはいったい何か?

花風社の浅見淳子氏は自閉症に関して「治る」という用語をよく使う。書名に登場するのも初めてではなく、「発達障害は治りますか?」という本もあった。

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by ヨメレバ

まあ、この辺り、なぜか一部の当事者、親御さんにはうけが悪い。他の書籍をみれば自閉症といえば「治らない」が合い言葉のごとく出てくるのだから、それからすると「治るなんて…胡散臭いのでは」と思うのかもしれない。用語の厳密さにこだわるタイプの人にとってはその用語使いがとんでもなく重大な過誤に思えてくるのかも知れない。

しかし、この本を親御さんなり当事者なりが読んで思い当たる点がまったくないということはないだろうと思うし、そしてそれこそがQOLを下げている要因であることもまた多いだろう。

当事者のQOLの向上に用語は実は重要ではない。重要なのはQOLが上げられるかどうかと言うことである。低コストで安全に試せる方法があるのなら試した方がお得だろう。

そこそこ快適にくらせるようになれば自閉症が治ろうが治るまいがそれもまたどうでもいいのである。

社会性を主体とした診断用の定義しかない現在の状況で「治らないから周囲が理解を」が合い言葉では、治るところもハビリテーションで改善・解消できるところまで捨てることにないかねない(今の自閉症スペクトラムに関する常識ってツッコミどころ満載である、どこだどうツッコミどころ満載なのかはスライド動画化してあるのでこちらをどうぞ)。

医者も支援者も、そして親御さんや当事者もこの本のタイトルにこめられた(と、私は勝手に思ってるのだが)「自閉症は本当に治らないのか?」という問いかけを真摯に受け止める時期に来ているのではないだろうか?

難しい話はさておき、ごく簡単で低コストでリスクの低い方法を試してしつこい疲れや不眠とおさらばする可能性を拓くか、試さずにしつこい疲れや不眠と付き合い続けて不満や辛さを持ち続けるか? その選択は個人の好みではあるが、私なら前者を選ぶ。

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by ヨメレバ

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