実家にもどり、久しぶりにいろいろと父と話をするのだけど、うちの父の家系というのは、すごく精神力が強い家系で、厳しく自分を律し、それを他人に押し付けることがない人たちです。
もともと農家で、父と歳の離れた姉というのは、すごい人です。11人兄弟の長男に嫁いだというところだけでもすごい。
当時、戦後の産めや育てやの時代で、そういう大家族に嫁ぐってどんなんなだろう?
彼女は現在85歳。子供達は、畑は継ぐ人がいないので、この85歳の叔母が全てみています。他の家族は、花の栽培をついでいたりします。
季節になると1日で2000個の玉ねぎを一人で植えるといいます。ほうれん草も出荷できるし、里芋だって作ります。
なんだって作ってしまうんだろうなーと思います。毎日畑に出て、夜になると夜にでる害虫を殺したりもします。たぶん、畑の広さも1000坪はあるのではと思われます。これを一人で耕し、作物を作っているわけですね。
このおばも非常に自分に厳しい。けど、誰にも強く生きることを強制しない。自分にただただ厳しく律するわけです。
今年は2000個タマネギを作ったそうです。これも一人で1日で植えたそうです。ところが、それが全て売れるわけではありません。収穫時に形が歪んでしまえば、それはもう売り物ではありません。作物というのはお日様が指す方向に伸びるので、玉ねぎなどはどうしてもお日様のほうに向かい、歪んでできることがあります。
叔母の旦那さん(私から見たら叔父)は、故人ですが、生前はすごく勉強家で、夜はいつも勉強し、日中は畑に出て、化学的な法則から素晴らしい作物をつくるのはどうすればいいか?というのを学んでおりました。そのやり方を叔父から聞き、その知識でつくるため、それはそれはすごいおいしくて立派な作物が出来てきます。
そんな素晴らしいものでも、お日様のあたり具合などで形が少しでも歪んでしまえば、それは売り物にはならないわけで。もったいない!!おばはそうなると宅急便で、玉ねぎやほうれん草を私たちの家に送ってくれて、これが本当に顎が落ちるくらい美味しいわけです。もうおばからの箱がつくと箱の外まで野菜の匂いがします。近くの八百屋に行っても、あの匂いはかぐことができない。
父と思い出話でそのことを話すと
「最近は、野菜が我が家に送られてくることも減ったんだよ。」とのこと。
「そりゃ歳だもんねー。」
というと、これが違った。おいしい野菜の評判は相変わらずいいのだけど、形が歪んで売れない(破棄する)のを孫たちが気にして、ほんの少し歪んでしまったものを道の家のような産地直送に売り込みに行ったそう。そうするともちろん品はいいので、値段は丸い玉ねぎよりは安いけれど、引き取ってもらえることになり。孫たちもそこから、少しお小遣いをもらうことに決めて、せっせとお店に運んでいるそう。旅行者の方々は産地直送の甘くておいしい無農薬玉ねぎを安価で手に入れられるそうです。玉ねぎは捨てられることなく、皆さんのところに行き渡るようになったそう。
これもすごい。
野菜って、本当に歪んじゃダメなのかな?と思います。おばの作るものは本当においしいし、これがお日様の向きなので歪んだだけで、破棄とかおかしいですよね。
けど、おばはこういう納得のいかないことにも怒ることなく、淡々と働き続けるのです。農家というのは、もう日本の歴史上、納得のいかないこと、不合理な事を押し付けられてきた人たちです。しかし、うちの父とおばの会話で、人を悪く言ったり、愚痴ったりしてるのはほとんど聞いたことがありません。自分に対して厳しく生きている証拠かと思います。
ここ数年、おばは地域の保健婦さんから勧められて、リハビリに通っているらしい。毎日畑に出てるのだから、毎日すごい運動量なので、健康です。おばは、他にもリハビリに行きたい人はいるだろうと、私が行けば行くことができない人がでてくるのでは?と、遠慮していたそうですが、保健婦さんは、おばの曲がっている腰が気になって…ということらしい。おばはそれも農家に嫁いだ宿命とおもっていたようですが、それでも勧められるまま週に1回、通うようになったら、なんと腰がまっすぐになってきて、年々元気になってきたらしい。85歳で腰がまっすぐになって、元気になってくるってすごいなぁ。ということは私なんて、もっと自分に厳しくいきれば、もっと健康になるっていうことだろうか?
父とお酒の飲みながらした話をちょっとブログでシェアしてみました。