「聲の形」から考える、「いまここにある障害者いじめ」(7)

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Nice!

このシリーズ記事では、いま週刊少年マガジンで連載中の話題のまんが、「聲の形」をとりあげ、その中で主要なテーマ、モチーフになっている「障害者に対するいじめ」という観点から考察を加えています。 聲の形 第1巻・第2巻・第3巻大今良時講談社 少年マガジンKCこのシリーズ記事、とっかかりとしては「聲の形」を題材にしましたが、既に話題としてはまんがを離れていま。「聲の形」自体の話題については、別で展開している専門ブログ(笑)をご覧ください。ブログ「なぞ解き・聲の形」さて、グラフを使った説明を続けます。前回触れたように、弱者が支援されず弱いままで生きることを強いられる「前近代的社会」は、弱者に対する一定の支援を提供することで、(福祉面について)「近代的社会」に生まれ変わります。こちらが前近代的な「弱肉強食社会」のモデル。それに、このような「段階的福祉」を提供することにします。前回も書いたとおり、3段の階段状になっているのは、このモデルで提供されている福祉が「重度」「中度」「軽度」の3段階認定制度によって実施されていることをモデル化しています。このような福祉を提供すると、グラフがこのように変わります。弱者の側(左のほう)が、社会から得られる利得が底上げされることで、弱者にとってもある程度「生きやすい」社会が実現されているということが示されています。ところで、このグラフには「嘘」があります。それは、「このような社会福祉はタダで湧いてくるものではない」ということです。つまり、このような弱者向けの社会福祉を実現するためには「リソース」、もっと平たく言えば「税金の投入」が必要です。そして、その税金はどこから取ってくるかといえば、比較的余裕のある「強者」、つまりグラフでいう右側のほうに属する人たちから徴収することになります。こんな感じですね。ここで、このグラフは実際にはもっと右のほうに長く伸びていると考えていただきたいと思います。(そうしないと、「徴収する税金」と「提供される社会福祉」の大きさがバランスしません。)これらをすべて取り入れて、グラフを書きなおすと、このようになります。近代福祉社会の典型モデル図黄緑の破線が「政府の関与のない、弱肉強食(前近代的)社会」のオリジナルモデル。茶色の実線が「3段階認定式の社会福祉」をモデル化したもの。紫色の破線が「その社会福祉を実現するために必要な税金」をモデル化したもの。ですので、実際にはこの値はマイナスで働くことになります。そして、これら3要素を加算してできあがるのが、水色の実線で、これが今から議論の対象とする「ベーシックな福祉社会のモデル」ということになります。(次回に続きます。)