いつも居る人にありがとう

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Nice!

下の子が学校のキャンプも行き、水曜日から2日間家を空けていた。9月からの中学進学を控えたいわゆる修学旅行的な行事なのだ。

今まで2人揃ってサマーキャンプに行く事はあってもベンだけが家に残るということはなかった。

そんなわけで一人残されたベンは、今回弟の大切さを再認識させらたようで、しきりに「I miss my brother」を連発する。何かいつも一緒に居る者が居ない感覚というのはどうにもならないのは良くわかる。しかしながら、僕にとっては毎日弟の見ていたテレビや、彼の存在自体にベンが随分と興奮させられていたことにも気付かされる機会となる。

単純に狭いアパート内でひしめき合う家族の絶対数が減ったことによる自然な緊張感の緩和もあるだろう。「Be quiet !」などといったベンに対する弟による小言も、うっとおしいのもわかる。

食事中もいつもより落ち着いて、席を立たずに食べている。自分の分け前を争う相手もいないのが、何か精気を失わさせているようにも見えた。

とにかく、彼らが寝ている時以外に家の中に静寂があるというのが驚きだ。

弟が帰って来たら、少しテレビも控えてもらうように提言しようと思いながら、すぐに金曜となり帰宅の時がやってきた。朝、学校に行くベンは、「I have to pick up my brother」(弟を迎えに行かなきゃ)と言う。3時に帰る予定だったので、「よし、ベンが帰ったらその足で迎えに行こう」と約束して家を出た。

僕自身、何か重大なアシスタントを失ったような気分となっていたので、帰りが待ち遠しい。

3時前、スクールバスで帰ったベンとその足で弟を迎えに行った。

既にバスから降りていた弟は、こちらに手を降り歩み寄る。僕は、ここでベンが日頃弟に与えているストレスを帳消しにするかのような感動的な対応をするのかと期待していたのだったが、顔を見るや否や、いつものベンに戻ってしまった。

弟にハグをする訳でもなく、「おかえりなさい、ミスしていたよ」と言う訳でもなく、何事も無かったかのように「I'm thirsty. I have to drink soda」(僕は喉が渇いたよ。ソーダを飲まなきゃ)と言うのだった。

映画のクライマックスにDVDが壊れてしまったかのような気分になった僕は、弟の方に「ハグしないの?」と聞くと、「Yeah~, that's OK 」(う〜ん、別に)と顔をしかめて言う。

「そうだよな。そういうものだよな。」と妙に納得しながら冷蔵庫に冷えたソーダのある家に戻った。