【報告】「ケアホームをみんなで考える勉強会」(その3)

3
Nice!

「ケアホームをみんなで考える勉強会」報告その3です。
これまでの記事は、その1その2です。順に読んでいただくとわかりやすいと思います。次回が最終回です。

グループワークでは、

私たちの子どもが、親元を離れて、幸せに毎日を暮らしていく「ホーム」をつくるために 
・できていること/足りないこと
・よくわからないこと

を話し合ってもらってから、グループで1つ「シンポジストに、会場参加者に問いかけたい質問」を出してもらいました。
写真は、各グループから出た9つの質問です。

carehome1

質問を4つにグループ分けしてみました。

【グループホーム立ち上げ】
・親が立ち上がるために何からスタートすればよいのか?
・グループホームを立ち上げるにあたって、行政、事業所の無理解など親の立場でどうすればよい?
・地域の協力者を得た際にどのような戦略を使ったか?

【親離れ、子離れ】
・親が元気なうちに、本人・親もできることは何か?
・親の立場として、親離れのタイミングは? どんな条件がそろえばいい?

【世話人の人材確保】
・どうすれば、本人にあった支援ができる人を確保できるか?
・本人の意思をどこまで尊重すべきか?(ルールをどこまで決めるか)

【そもそも】
・グループホームって普通の生活ができるの?
・「グループホームありき」でいいの?

それぞれ、じっくりと話し合いたいテーマですが、残された時間は20分を切っていました。限られた時間の中で登壇者がどうしても言っておきたいことを話していただきました。

※記憶に基づいた紹介ですので、文責は全てカイパパにあります。

【世話人の人材確保】について。小林信篤さんから──
まず、そもそも人材の採用に苦労している現実がある。就職説明会をがんばっても、内定を出しても辞退されてしまう。福祉業界全体が不人気。
そして、人材育成も試行錯誤をしている。良い方法があれば自分も知りたい。

ひとつ言えることは、個人での対応には限界があるということ。グループホームの世話人が一人で抱え込まず、バックアップする仕組みが大切。組織として支えることが必要と考えている。

carehome2

【そもそも】については、戸枝さんから──
「グループホームは普通のくらしか?」は、「どこまでが普通のくらしか?」という問いに言い換えられる。
入所施設しか選択肢が無い状況がずっと続いてきて、「地域でも暮らせる」となった時に出てきたのがグループホーム。
入所施設との比較で言えば、行動障害がシビアな人から地域で「個別化」すべき。入所での大人数での集団生活の環境によって、ますますこじらせていってしまう。
ノースカロライナ州アルバマーレ市でみたグループホームの一室のエピソードを紹介したい。壁が全部「黒板」の素材になっていた。お絵かきが好きな人が入居。描きたいだけ描いて、「味わい尽くしたら堪能して次へ進める」という方針にもとづいている。「描けないように禁止する」発想ではない。これも、グループホームが個室だから個別化してできること。

だが、「グループホームだけしか選べない」のかといったら違うと思っている。
現実問題、受け皿のキャパシティとして愛知県内のグループホームの数は全然足りていない。すぐに増えるとも思えない。それを家族介助で何とかしているのが今の現実。
ホームヘルプを入れて、一人暮らしが出来る人もいる。その選択肢もある。
在宅でホームヘルプを使いながらやっていくことはできる。ではグループホームの特長は何か? 世話人が24時間常駐していること。最終的な「看取り」もできる。グループホームは、シビアな方が使うコアなセンターとしての役割を担っていくのではないか。
【親離れ、子離れ】について。
質問を振る前にカイパパから「親の気持ち」として、こんな話をしました。
先日ショッキングな文章を読んだ。
「知的障害のある子に対して、親はあたかも親は死なずにずっと一緒にいられるかのように振る舞うことは、子どもをだましているのではないか?」という内容だった。
親も必ずこの世からいなくなるのに、そのことを知らされず、信じたまま暮らしている。そして、ある日突然いなくなる──それは、子どもにとって、裏切りのようなものではないのか? そのことがずっと胸に残っている。
今、自分たちはとっても幸せに暮らしている。この暮らしがずっと続けばいいと願っている。だけど、そうも行かない。どうすればいいのか。
戸枝さんから。
血のつながった親子だから、頭に血が上ってしまって、うまくいかないこともある。親も子どもも高齢になって、新しいことを始めるエネルギーが無くなってから環境を変えるのはつらい。
いきなり、グループホームで100%時間を過ごすようにしなくていい。距離を置くだけ。グループホームに泊まりに行くというところから慣らしていったらよい。週末には実家に帰ったらいい。

親離れの時期について言えば、「30歳になったら」と考えたらどうか。なぜなら30歳はみんなに来るから。「何かができるようになったら家を出る」とハードルを要求する必要はない。

今まで自分が見てきて、グループホームに入居するご本人の「家を出たプライド」のようなものを感じることがある。変化が、成長のチャンスになっている。
時間切れで、【グループホーム立ち上げ】についての具体的なお話はできませんでしたが、戸枝さんから
「障害のある人の暮らしをノーマルなものにしていくための、こういった親や支援者の取組み、そして本人の思いを、どれだけ『社会化』できるか?」という問題提起がありました。
障害のある人の暮らしが、「関係者だけのコップの中の嵐」であるかぎり、地域は知らん顔で通りすぎていってしまう。そこにある努力や涙そして願いを、知ってもらうことからだというヒントだとわたしは受け取りました。

最後に、積水ハウスの大倉さんに、わたしから「なぜ積水ハウスは民間企業であるにもかかわらず、そこまで真摯に、地主を説得してまでグループホーム開設に協力しているのですか?」と質問を投げかけたときの答えを記しておきます。

大倉さんはこう答えられました。
「青い」と言われそうですが、積水ハウス株式会社の社是は「人間愛」なのです。私も入社以来30数年叩き込まれてきました。建築会社として早い時期からバリアフリー住宅に取り組んできました。日本の建築企業で唯一国連から表彰をされています
積水ハウスができることがある。支援者や親にできない部分でお役に立てることがある。ぜひお手伝いさせて欲しい。(大倉さんからは、「積水ハウスにできること」の具体的な中身もお聞きしました。いつか記事にしますね。素晴らしいよ!)

──こうして思い出すだけで、濃い勉強会だったとしみじみ思います。このままではもったいないですね。続きをやりたいです。

カイパパの感想、考えていることは、次回最終回で書きます。
あと一回お付き合いください。