数日間の入院でもときに民間医療保険のための診断書なんて書くわけだが。書くのは退院サマリーの二番煎じみたいな薄い内容だし(「輸液と抗生物質の投与で軽快した」みたいな)いまさら仕事の負担なんてものでもないんだけれども。いちおう一枚いくらで病院の収入にもなってるわけだし。でもテレビのコマーシャルでスッポンのトシさんとかへんなアヒルとかが宣伝するのを聞いたりするたびに、違和感を覚えはするわけで。民間医療保険をありがたがって健康保険(「国民皆保険」を形成しているあれね)を軽視するような宣伝をされるってのは、ちょうど、貧乏なお父さんを粗末に扱って、たまにやってきて小遣いをくれるおじさんばかりをありがたがる馬鹿息子になるようにと説得されてるようなものかななんて思ったりもして。馬鹿息子は苦労して飯を食わせて服を着せて学校にやってくれるお父さんには砂をかけつつ、羽振りのよさげなおじさんにはしっぽをふるわけだが。そもそも生活費全般とか学費とかの一切合切と、子供の小遣い銭と、どっちが高額なんだとか考えもせず。しかしそのおじさんも小遣いをくれるから善人だとはかぎらないわけで。いやいや世間のたいていのおじさんは善人ですよ。小遣いはくれても、息子がお父さんに親不孝な言動をしたら、おまえちょっとここへきて座れと怖い顔で呼んで説教の一つもするってのが正しいおじさんですね。たいていのおじさんはそうですよね。時にそうではないおじさんがいますがね。息子の親不孝を陰で助長するようなおじさんが。たいがいお父さんの財産をねらってますよね。おじさんの口車に乗せられた浅慮な息子が、お父さんを見限っておじさんを頼ろうとしても、おじさんがいい顔をみせるのは息子をいいように利用してお父さんの母屋を乗っ取るまでのことですよね。乗っ取った後は、息子は学校もやめさせられて丁稚奉公に出されてしまうわけですが。でも案外と息子が「貧乏なのに無用な学校にうだうだ生かされないで実社会に出してもらえて、実力本位で生きていけるようになった」とか言ってかえっておじさんに感謝したりしたら怖いわけですが。いや、君はなけなしの遺産をむしられてしまったんだよと。スッポンのトシさんは七曲署ではいい刑事さんだったんだけどな。