今日もまた雪がちらつきはじめた。今年のニューヨークは例年の2倍近くの行きが降っているそうで、ふと気づけば路面が真っ白という事が多い。積雪量が多くて歩けないというまでは降らないのだが、こういった中途半端な雪は、溶けてまた凍るとアイススケートのリンクのようになってしまうのだ。ビルや家の前の歩道はきちんと雪かきがされていて、そのまま凍ってしまうことは無いのだが、やはり手の届かない所は多く、例えば交差点にある歩道のコーナーは誰の建物にも面していないことから、置き去りにされて強烈なアイスバーンを作ってしまっていることが多い。その置き去りになっていたスポットに降り立ったベン。ショッピングモールの駐車場で車から降りた瞬間、滑って前のめりに大転倒した。うっすらと残っていた雪が見事に凍っていたのだ。「Ahhh, Ahhhh」と叫んだ後、「I fell down !, My chest is hurting !」と事態を大声で報告する。あまりにも大袈裟なリアクションに僕もベンの弟も一瞬怪我をしたかと息を呑むが、すぐにそれがベンのアクシデントに対する表現方法だということに気づき、冷静に対応する。「ベン、胸はどれくらい痛いんだい? 口や顔は大丈夫か?」と訊くと、ぜいぜいと息をしながら「I am OK, I hit my chest」と落ち着きを取り戻した様子で今度は注意深く車から降りた。次に雪が降った日には、セントラル・パークにそり滑りに行った。たくさんの子供達が傾斜を利用して滑ってゆく中、滑り終えて歩いていたベンに向かって突進してゆくそりがある。「ベン、危ない!」と坂上から声をかけると、ベンは向かってくるそりに気づいてまたもや「Ahhhhh Watch out !」と大声で叫ぶ。そりはベンにぶつかって止まり、ギャラリーの注目を浴びながらぶつかった子は気まずそうに立ち上がった。15歳にもなるティーンが、5歳そこそこの子供の乗ったそりに大声を出しておののく姿は何とも奇妙ではあるが、問題は、僕の期待していた「よける」という動作ではなく、「驚いて怖がる」という意外な反応に、一番大切な「よける」動作が凍り付いてしまったことだった。緊急の場合に落ち着いて対処出来るよう、大声で叫んで自身が興奮してしまわないように教えてあげる必要がありそうだ。