のび太は大好きなものは最後に取っておいて、
「これは『とっておき』なんだ〜」と言って、
大事そうに食べる。
1年生の頃、その「とっておき」のチョコをなかなか食べないのび太に、
「早くぅ〜食べて食べて!のび太〜
早くボクのこと、食べてぇ〜!」
と、声色を変えてチョコになりきって言ってみた。
「ねえねえ〜早く食べてよ〜」
「・・・分かったよ〜」
パクッ・・・
「イテッ!」
もぐもぐ・・・
「イタイ!イタイ!」
一口ごとにチョコが「イタイ」と叫んでるように、
アテレコしてみた。
「・・・え〜!痛いの?だって、チョコ、食べたいのに〜!」
・・・・・泣いた・・・・・
げげ!まさか泣くとは!!!
「ゴメン!のび太!違うよ〜
チョコは『痛い』なんて言ってないんだよ〜
お母さんが「面白いかな〜」って思って言ってみただけだよ〜」
「え〜〜〜ん!!面白くない〜
ほんとに痛いかと思ったよ〜え〜〜〜〜ん!」
そう・・・。
冗談が通じなかった・・・。
仕方がないのだ。
幼いのび太は当時、マンガやドラマを見ても、
現実と虚構の境目が理解できず、
笑えるアニメを見ても、号泣していた。
自閉症の子供にこういう事を教えるのは至難の業だ。
しかし、イタズラ好きの母は懲りないのだ・・・
カワイイのび太、つい、からかいたくなる。
何度か、同じように「食べ物」になりきって、セリフを語っていた。
あるときはノート。
「ねえ!ちゃんと丁寧に書いてよ!
汚い字は嫌なキモチになっちゃうわ〜」
あるときはランドセル。
「おいおい!そんな風にドサッと置いたら痛いじゃないか!
大事に使ってくれないと、6年生になる前に壊れちゃうよ!」
そのたびにのび太は、
私のアテレコに対して、ちゃんと応えてくれていた。
「あ、ゴメンね、ノート・・・書き直すよ」
「あ〜!大事に使うから6年生まで壊れないで〜」
まだまだ、幼いのび太。
一見、私の相手をしてくれるようでいて、
でも、本気なのだ。
だって、涙目で言葉を返してくる。
本当にノートやランドセルが話していると思っていたのかも知れない。
昨日、おやつの大好きなクッキーを1枚「とっておき」していた。
久々にやってみよう・・・ウシシ・・・
大事そうに最後の1枚のクッキーを一口・・・
パク・・・
「痛〜い!」
ニヤ・・・のび太の様子を伺うワタシ・・・
「・・・(上目遣いでこちらをジロ・・・)」
パク・・・パク・・・パク・・・
「痛い!痛い!痛いよぉ〜!」
「・・・・・」
・・・あれ?なんだよ〜無視?相手してよ〜!!
パクパクパク・・・
「イテテイテテイテテ!!!」
大げさに言ってみた・・・
「・・・あのさ〜気になっておいしく食べられないよ!」
ガ〜ン!!!「・・・・・相手してよぉ〜!!」
「・・・・・ええい!ガリ!ガリガリガリ!!!」
(わざと、大げさに大きい口で食べるしぐさ)
「きゃ〜〜〜!!痛い痛いよ〜!」
「・・・・・こんな感じでいい?」
「・・・・・うん、いい。相手してくれてありがと・・・」
からかって遊んでやってるつもりが、
ついに、遊んでもらうようになった・・・。
これも、成長のひとつ、カナ?
ちょっとサビシイけど、冗談が通じるようになったのび太も、
なかなか面白い。
これからも、お母さんの相手、してね〜!!