会話の中身

34
Nice!

夏休み最後の週末は、旅行に行ける訳でもなかったので新学期に備えてキッチンを整理しようと思い立ち、組み立て家具の店IKEAに行った。

何故、新学期に備えてキッチンなのかというのは、最近子供達が自分で簡単なスナックを作ったりすることが増えてきたためで、電子レンジやトースターなどを安全な位置に移動しようというプランだったのだ。

しかし家具屋に行くと、やはり同じ様な事を考えていた人が集合したようで、順路に沿っての買い物はまるで新年お宮参りのようになってしまっている。こちらの9月は日本の4月のように、フレッシュ・スタートの月なのだ。

こうなってしまうと、何から何まで並びつくさなければならない。家具をオーダーするのにも、受け取るのにも、お金を支払うのにも20分近く待つのは当たり前といった状況。それでも、IKEAのスタッフは素晴らしい研修を受けているようで、他店の状況に比べたら遥かに手際が良い方なのだ。

ベンも数年前なら、人ごみという状況だけでコントロールを失い、買い物などとても付き合える状況では無く、すぐに帰っていたのだが、最近は少しでも聞き分けがあり、何とかなるようになったので買い物を強行する。

途中、ベンはお腹が空いてしまい、妻に買い物を任せてホットドッグを買いに行った。しかしながら、ここも当然長蛇の列。並んでいる間にべンはあちこちと動き回る。人に当たったりしないかと心配だが、それでも文句を言わずに待てる様になったのは本当に助かる。手を叩いたり、くるくると回ったり、何とか迷惑にならない程度にしていてくれれば、こういった騒がしい場所で待つ事はさしたる問題ではなくなってきた。

ところが、今回はちょっと様子が違う。列の先頭の方を見ると、ホット・ドックを作っている店員さんに、何やらベンが話しかけているではないか。

遠すぎて何を話しているのかはわからないのだが、何やらホット・ドッグを指差して会話をしている。店員さんの表情はあまり変わっていなかったので問題は無さそうだが、距離が遠すぎてベンを呼ぶにも呼べない状況だったのだ。

ホット・ドックを食べながら、「ベン、さっきは何を話していたんだ?」と聞くと、どうやら言いたくは無いようで、話をはぐらかすのだが、最近のベンは積極的で、自分から見ず知らずの他人に喋ることがある。本屋で人が邪魔な時にも「Excuse me, Man」とかなり失礼に割り込んだりもするのだ。

買い物が終わり、僕が商品受け取りに並んでいる間に、今度は妻がアイスクリームを買うためにベンと列に並んだ。すると彼女曰く、またしてもベンは店員さんにコップを指差して何か話していたというのだ。

理にかなわない質問はいつもの事だが、知らない人はびっくりしてしまうだろう。車の中でベンの聞くと、「IKEAカップは100ドルだ。」などと言うのでもう一度「店員さんは何と言ったんだ?」と聞くと、「カップは1ドルよ」と言われたと言う。

僕らは「..........」となってしまい、どう推理して良いのかわからなくなってしまったのだが、他人との会話という新項目が出て来たことは間違いなさそうだ。