勤め先の病院が全職員対象に、環境変化におけるCSの重要性とか称した講演会を開催した。3回繰り返してやるからどれかに必ず出席することというお達しで、事前に出席予定の調査まであった。なんだか詰まらない予感がしたんで、さっさと済ませるに限ると思って、先の金曜日に開催された初回に登録しておいた。
確かにCSは重要である。適切なタイミングでcesarean sectionに踏み切らないと母児ともに危険にさらされる。これだけ周産期医療をとりまく環境が厳しくなったご時世では正しく帝王切開を行うことは病院の死活問題である。死活問題ではあるがしかし、全職員を集めて地方銀行の関連企業が講演するってのは何か不釣り合いな気がした。
実際にはCSというのはCustomer Satisfactionの略であった。読者諸賢にはご明察の通り、東京ディズニーランドの接客が理想として語られた。ネズミの一派を見習えというご託は私はもう聞き飽きた。コンサルってみんなそう言うんだよね。枕詞はCSだとか何だとか(以前のはみんな忘れたよ)いろいろ変わっても。いったいコンサル君たちは東京ディズニーランドの接客を指導しとるのは自分だとでも言うのだろうか。他人の手柄を他人の職場で自慢して銭は自分がいただくけれど後の顛末は他人の責任でってのは、それはまっとうな商売というのか?そもそも君ら自身は俺ら顧客の満足を考えてるのか?
それでも、俺も出世したことだし、たまにはよゐこな面も見せなければならんなと、前半の講演は我慢して聞いていた。我慢ばかりだとやられ放題な気がして、この人は説教臭すぎるのが原因で銀行から関連企業に左遷されたんじゃないかなとか考えてみたら多少は気が晴れた。そのうち、私のお話はこれくらいにしてとようやく言ったので、やれやれこれで帰れるぜと席を立ったら、後半ではお互い同士で挨拶の練習など実際に行いますなどと言い出した。なんだかもう一刻もその場の空気を吸ってられないような気分になった。まだ帰るところではありませんよという声が羽虫のように背中にまといつくのを振り払って、そそくさと帰ってきた。
しかしこうして病院にやってくる面々の誰もが病院は東京ディズニーランドを見習えと言うってのは、なにか世間に広く根源的な認識として、病院はディズニーランドたるべしという暗黙の要求が出回ってるんではないかと思った。健康保険証という入場パスを買って入場したら、あとは無料で希望通りのアトラクションに入れて、アトラクションでは黙って座ったら座席が勝手に動いて100%安全保障のお楽しみを味わわせてくれて。多少は行列で待つことがあっても職員が完全無欠の笑顔でパレードしてるから全然退屈しなくて。病院にもかくあれと求められているのだろうか。理解できそうな気もするし、医療ってそんなものではないだろうと腹が立つような気もするし。なんだかなあ。
Customer Satisfaction についてはその後、内田樹先生の論評を拝読した。ネズミ話よりもよほどためになったので書き留める。