自閉症の子どもと暮らす家づくり(17)

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Nice!

さて、娘のために新しい家を探して始めてみて、新築戸建に希望ぴったりの物件がないため、手を広げて中古戸建も検討対象に加えることにしたわけですが、そもそも中古戸建は流通量が少なく、同じ条件で検索すると新築戸建よりも条件に合致する物件がはるかに少ないことが分かってきました。さらに、問題はこれだけではありませんでした。実際に、絞り込みの条件をかなり緩めて、何とか(検索条件上)希望に近い中古戸建をピックアップしてみた結果、もう1つの興味深い結果が浮かび上がってきました。それは、我が家の希望条件に合致する中古住宅のかなりの割合が「二世帯住宅」だった、ということです。まず、駐車スペースを2台分確保する時点で、その家が二世帯住宅である確率が飛躍的に高まります。これに、3階建てではなく2階建てを希望したり、土地面積を広めに想定したりといった条件が重なると、印象として、検索に引っかかってくる家のうち半分くらいが二世帯住宅になっていました。でも、いろいろ考えてみたのですが、二世帯住宅では、かなり無理をしても我が家では「使えない」という結論になりました。何より、通常の戸建てのせいぜい1.2倍とか1.3倍程度の床面積の家を二世帯にしているため、部屋の数は多いもののそれぞれが狭く、収納も少なく、何よりも6畳程度の「お茶の間」的LD+古いアパートのような狭さのキッチン、みたいなLDKが2つある、といった使えない間取りになっているのです。長女と妻は自宅にいるほとんどの時間をLDKで過ごしますから、これだけはありえないでしょう。そして最後に、なぜここまで「条件に合致する中古戸建が少ないのか」というもう1つの大きな理由として、「売り出されている価格が相場を無視して高すぎる」ということがあげられます。戸建ての値段は、ごく簡単に計算するなら、その家の面した道路に設定された路線価を1.3倍ほどして土地の値段を求め、そこに建物の価値を加算すれば求められます。日本の木造家屋は築20年でほぼ価値がゼロになることと、有名ハウスメーカーの注文住宅で高い家を建てても、中古になってしまえばその建築価額は維持されず、建売りよりちょっといい程度の評価にしかならないことを考えると、築10年の家の建物の価値は、4LDK程度の家なら高くても1000万円が関の山でしょう。建売ならさらに下がって数百万といったところでしょうか。だとすれば、築10年程度の4LDKの中古戸建の値付けは、土地の値段(路線価の1.3倍)+1000万円以下でなければおかしいはずですが…。実際には、この計算から求められる適正価格で売られている物件はほぼ皆無で、それより1000万円近く高く売られている物件がザラにあります。その結果、土地の値段+1500万円程度で売りに出されている新築建売よりも高い、築10年以上の中古戸建がぞろぞろと並ぶわけです。下手をすると、もはや建物価値ゼロになっているはずの築20年以上の中古戸建が、土地の相場+1000万円よりも高く売られていたりして唖然とすることもしばしばです。こうなってしまう理由は、値段をつけている売り主がプロの不動産業者ではなく、個人であることによるものが大きいのだと思います。土地の現在の相場、建物の経年による急激な価値の下落、周囲の新築物件の価格などを考慮せずに、「買った値段がいくらだったから」という理由で、そこから少し下げただけの値段をつけて売りに出されてしまう物件がとても多い、ということを、不動産業者の方からも聞きました。ともあれ、そんなこんなで、中古戸建は流通量も少ないし、スペックも(二世帯住宅だったりして)合わないし、しかも値付けがムチャクチャで割高な物件だらけ、ということで、結局、少なくとも我が家にとっては検討対象にはほとんどならないことが分かりました。我が家の家探しは、またもや振り出しに戻ってしまったわけです。