「聲の形」から考える、「いまここにある障害者いじめ」(5)

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Nice!

このシリーズ記事では、いま週刊少年マガジンで連載中の話題のまんが、「聲の形」をとりあげ、その中で主要なテーマ、モチーフになっている「障害者に対するいじめ」という観点から考察を加えています。 聲の形 第1巻・第2巻・第3巻大今良時講談社 少年マガジンKCまんがの単行本も、いよいよ来週月曜日に3巻が発売されますね。3巻は最後に驚きの展開が待っている(はず)ので、これまで2巻までお持ちの方はぜひ3巻も読んでいただきたいと思いますし、まだ読んでいない方は3巻発売を期にまとめて読むのもとてもいいと思います。ぜひ。ところで、先週はこのシリーズ記事でまさに今連載中の「聲の形」の展開を話題にしましたが、そちらもまだ話が続いています。いちおう、27話での植野のセリフはある程度露悪的なものだった、という整理で話が前に進んでいくようなので、そちらはそちらでこの先を見守っていきたいと思います。さて、ここからは本論に戻りたいと思います。今回、このシリーズ記事で着目しているのは、「聲の形」の小学生編でいみじくも示されているとおり、障害者(だけでなく、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人たち)へのいじめのなかには、単に「異種の存在を排除する」といった「古典的」なものだけでなく、「弱者が公的に保護され支援されていることに対する『衡平化圧力』としての私的制裁」といったものがありうる、ということです。それがどのようなものであるかということについては、前々回のエントリで箇条書きで書きました。ここでは、その中身をもう少しシステマチックに見ることで、問題の構造を明らかにすると同時に、そのような「いじめ」を抜本的に解決しうる方法と、応急処置的に解決する方法についても、あわせて構想していきたいと思います。その副産物として、障害について「社会の理解を深めていく」ことがなぜ必要なのか(そのことと、障害者への「いじめ」がどのようにつながっているのか)、ということについても1つの答えが出せるように思います。そのために、このようなグラフを導入したいと思います。これは、今回とりあげている障害者いじめの問題が発生するしくみ、構造を理解するために作成したグラフで、まあ率直にいって問題を単純にしすぎている部分はあるのですが、それでも多くのことをこのグラフから語れると思いますので、これを使っていくことにしました。このグラフ、横軸(x軸)とたて軸(y軸)で構成されており、横軸は、ある個人の、その人が所属する社会に対する「適応できる力」を表しています。左にいくほど社会に対して適応できる力が弱い、つまり社会的弱者であることを表しており、右にいくほど逆に社会に適応し力を発揮できる状態にある、ということを示しています。一方たて軸は、ある個人が、その人が所属する社会から得られる、収入や社会的サービスの利用可能性などの「リソースの量」を表しています。つまり、このたて軸で下のほうに位置すればするほど、得られる社会的リソースが少ない(平たく言えば収入が少なくいろいろなサービスを利用できる機会も少ない)、上にいけばいくほど多くの社会的リソースが得られる(収入も多く裕福な生活を享受できる)ということを表しています。このグラフのなかに、ある社会に所属する人を「その社会に適応できる力」と「その社会から得られるリソース」によってプロットし、その関係性を単純化すれば、このグラフのようになるでしょう。平たく言えば、「社会への適応できる力」と「その社会から得られるリソース」は比例関係になる、ということです。(本当はまちがいなく非線形になりますが、そこも単純化しているということでご容赦ください。)つまり、このグラフは、ある社会において、強者と弱者がどのように扱われているか、ということを単純化して示したグラフである、ということになります。次回以降は、このグラフを使って考察を深めていきます。(もはや聲の形はほとんど関係無い?(笑))(次回に続きます。)