ホワイトボードでコミュニケーション(16)

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Nice!

今回は、以前書いていたホワイトボードでのコミュニケーション療育について、番外的なお話と、まとめを書いてみたいと思います。一応、こちらのシリーズ記事については、今回が最終回だと思います。このシリーズ記事を連載していたのは、概ね去年の終わりから今年の前半くらいだったわけですが、その頃と比べて、ホワイトボードの活用状況が現在がどうなっているかというと、朝の予定:現在も活用中です。こちらは、夜の間に書いておいて、忙しい朝はそれを上から順に消していくだけ、という形で活用しています。食事の後の予定:現在も活用中です。食事が終わると、娘が妻にホワイトボードを持ってきて「かいて」と言って、その場で描かせるという形になっています。食事のメニュー:現在はやめました。もともとは、ここから始まったホワイトボードコミュニケーションでしたが、今年の中盤ごろから、描かれている食事のイラストの線のつながり(例えば、丸い線が書いてあったら、その線がつながっているか途切れているか)や角度などに強くこだわるようになり、描いてある内容よりも絵の形のほうでパニックを起こしたりする場面が増えてきたために、実験的にホワイトボードをやめて口頭などでメニューを伝えるようにしたところ、そちらのほうが良好なコミュニケーションがとれることが分かったので、そちらに移行しました。言うなれば、食事のメニューについては、娘はホワイトボードを「卒業」して、より難易度の高い音声言語でのコミュニケーションが通用するようになった、ということだと考えています。(ちなみに、絵の形などへのこだわりには、飲んでいた薬の影響もあった可能性があり、最近医師の指示で薬を替えたところ、他の面でのこだわりも大幅に緩和されたため、今ならそのこだわりは現れないかもしれません。でも、口頭で伝わるなら、あえてホワイトボードを使うことはないですね。(^^))その他:外出時に使っています。外出時、特に車で外出する場合には、かつては家のドアの前で絵カードを見せ、車のなかでも絵カードを貼って次の行き先を提示していたのですが、他の場面でホワイトボードを使うようになってからは、外出時の行き先提示もホワイトボードを中心に伝える形に変わりました。絵カードからホワイトボードに変えて、柔軟性が増した部分として、これまで絵カードでは「次の予定」だけしか伝えることができず、2つ以上の予定を同時に貼ると混乱してしまっていたのですが、ホワイトボードの場合は(朝の予定や食後の予定と同じように)、先のほうの予定までたくさん数珠繋ぎに一気に描いても大きな混乱を示さず、上から順番にやっていく(そして順に消していく)ことで先の見通しを持ちながらスケジュールをこなしていくことができるようになりました。さて、こんなわけで、我が家ではホワイトボードを本格的に娘とのコミュニケーションに活用するようになってから、概ね1年近くがたちました。ホワイトボードを導入する前にときどきあった、「毎日のルーチンであるにもかかわらず、先の見とおしが立てられずにパニックする」ということは、現在はほぼなくなりました。そして、たくさん数珠繋ぎに描かれたスケジュールが1つずつ消えていくことで、娘は「スケジュールが見とおしどおり先に進んでいる」ということを認識できて満足しているように見えます。シリーズ記事のなかでも何度か触れてきましたが、やはり、「1つずつ消えていく、消していくことができる」という「視覚的な効果」が、娘にとって分かりやすさにつながっているらしいということは改めて実感しています。また、絵カードに比べるとホワイトボードに描くイラストは単純化されて「抽象度」が高いですから、将来的に「文字だけ」に進んでいくための中間のステップとしても(絵カードからいきなり「文字だけ」に移行するよりも)効果的なんじゃないかと思います。一方で、食事のメニューの件でも見られるとおり、ホワイトボードというのはコミュニケーションの「ゴール」では必ずしもなく、音声言語でコミュニケーションが可能になれば、そちらのほうがより時間もかからず、幅広い内容を伝達できることになります。ホワイトボードを「卒業」して、音声言語に移行するという場面も今後もどんどん出てくるだろうと期待しています。ただ、その「移行」も一気に起こるわけではなく、あるコミュニケーションについては移行し、あるコミュニケーションについてはずっとホワイトボードを活用する、といったまだら模様になっていく可能性が高いと思われます。私たちだって、長ったらしい行事とかでは「式次第」とか「プログラム」みたいな「視覚支援」がなければ、最後まで集中して行事に参加できないわけですから、当然、コミュニケーション療育においても、その複雑さなどに対応して、さまざまな手法を組合せて使っていかなければならないということですね。コミュニケーション療育については、「音声言語にこだわらない」「使えるツールはなんでも使う」「さまざまな方法を並行して使う」「その時点での(お子さんの)能力の制約の中で、もっともコミュニケーションコストが低いものを選択する」といったことを意識することが大切だと思います。(要は、臨機応変にお子さんの状態にあわせてカスタマイズして療育する、ということに尽きるわけですが)そういった「いろいろなやり方」の1つのヒントとして、我が家での「ホワイトボードのコミュニケーション療育への活用」が少しでも参考になれば幸いです。おまけ:我が家ではホワイトボードはあちこちで使ってます。私が平日、遅く帰ってくると、冷蔵庫にこういうのが貼ってあります(笑)。ちなみにこれですが、「冷蔵庫に貼っているもの」が書いてある場所だけホワイトボードマーカーで、それ以外は通常の油性マジックで書いてあります。こうすることで、イレイザーで消える部分と消えない部分を作っているわけですね。