「チェンジ」は使われすぎてちょっと安っぽい言葉になってしまったが、新年こそこのキーワードが何か良いことにつながる気持ちにさせてくれる。と、言ってもジムに通い始めるといった、ニュー・イヤー・レゾリューション的なものではなく、敢えて習慣になっていることから抜け出してみるのが僕にとっての新年的抱負であり、そんなわけで目標もゴールも無い。結局、髪を短く切ってみたり、ベースの弦をいつもと違うものに変えてみたりといった程度のもので終わってしまう。ベンとの事もそうだ。出会って16年、自閉症という障害に向き合って12年の年月が過ぎ、ぐるぐると回る停滞感を打ち破り次のステップに進むことの大変さは本当に実感させられた。それは、1つの問題をフォーカスして結果を見るといったものではなく全体が波打ってそれぞれに波及するような変化であり、それに伴って何かが進みはじめれば、ということ をいつも期待している。しかし、実際のところは怠け心が何もかも後回しにしていることが多い。そんなわけで、今年はベンの将来についてもっと真剣に向き合ってみようと思う。学校というシステムがあるのは、あと5年。21歳になると、ニューヨーク市のスペシャル・エデュケーションは終了するのでそれぞれ進路を見つけださなければならない。そんなわけで先週は早速、学校のカウンセラーの方と一緒に職業支援施設の見学会に行ってみた。ダウンタウンにあるビル1つが全て施設になっているF.I.G.G.S.という職業訓練所。かなり大きな規模でのサービスが行われている。実際に働いている部屋に通されると、年齢も障害の度合いも様々な人々がそれぞれが違った仕事をこなしており、ある人はアクセサリーを箱に詰め、ある人は値段のシールを張り、別の場所では洗濯はさみのプラスチック止め具と金属部分を合わせたり、宣伝用配布バッグの中にチラシを入れたりといった作業をしている。担当者の方は、ここはあくまでも訓練を行っているところで仕事ができるようになれば、実際の工場などの仕事を紹介します。ということだそうだが、実際にはかなり年齢のいった人も多く、ここにとどまってしまっているようだ。年をとったベンが仕事をしている様子を思い浮かべてみた。それは、僕の人生の中では想像することの出来ない未来だったのだが、今になってそんなベンを見たみたいと思える自分に、昔感じた手がかりの無いように思えた不安は瞬く間に現実として進行していたことを知る。「ああ、何とかしなければいけないな」と、焦る気持ちは高ぶるけれど、障害があってもそれは彼らの人生、それぞれが一番幸せに生きて行ける方法があるはずだ。そしてそれは、ベン自身が見つけるものなのだろう。