追悼 庄野潤三

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Nice!

けい子ちゃんのゆかた (新潮文庫)けい子ちゃんのゆかた (新潮文庫)9月に庄野潤三さんがお亡くなりになり、ちょうどその訃報と前後してこの「けいこちゃんのゆかた」が文庫で出版されたのでした。初めて作品に触れたのは、高校時代の教科書でしたか…。さりげない生活の姿が綴られる作品は、その後も出版されるといつも楽しみに読んできましたが、このところシリーズとなっていた老夫婦の日々を綴った作品は、一段と味わい深く感じられるものばかりでした。訃報に接してから、最近また何冊か読み返してみながら、思わずじーんとして涙が出てしまうことがありました。ドラマチックな涙を誘うような作品ではないのですが、作品の中の小さなエピソードから温かく優しい気持ちの交流のようすが伝わってきて、どの本を読んでも気持ちがやすらぐのです。自分がもっと年をとった時にまた読んでみるときっとまた新たな感動を与えてくれることでしょう。いつ読んでもその時々に愉しみを与えてくれる…それが庄野潤三の作品の良さなのでしょう。