[シリコンバレーでの私たちの暮らし]海を見た猫

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Nice!
相変わらずWindyは、調子が悪くなってきました。お医者様のところで、点滴を受けて点滴がもつのは、2日間のようです。 お薬も服用していますが、いまいちの効き具合です。 来週、香穂のお誕生日でPepperdineにいく予定の私たち。あと6日間Windyに持ってもらうためには、3回点滴を打たねばなりません。 いったいいくら予算がいるかな?私のスケジュールは?といろいろ都合を合わせていて、だんだん 「自分は的外れなことをしている。」 といういう気になってきました。 本当にウィンディが必要なものは何なのか?を再度、一から考えてみました。 ウィンディに必要なことは 「香穂に会うこと」 です。なので、香穂に帰って来てもらうことも考えましたが、香穂は今週、来週は、大事な授業が入ってて、これをさぼるとせっかく頂いたスカラーシップがすべてパァになるということでした。 さて、ウィンディの立場に立って、点滴が自分に必要だと思っているだろうか?と思うと彼女は、点滴が大嫌いです。点滴の針も今のウィンディの体力には、負担だったようです。 お医者様のところから引き取ってくる時にわかりました。 で、私が必要だと思っていることは、 「点滴と香穂に会わせること」 です。 じゃ、今から香穂に会いに行ったら、点滴は必要ない訳で・・。来週まで待つ必要もないのでは?と思い始めました。 それでふと目をウィンディにやると立っていたウィンディがまるで一枚の紙を立てた時の様に ひらっ〜〜っと倒れて動かなくなった・・。 あぁ・・これはもうだめだ。点滴だけして辛い思いだけして、来週まで持たなかったら・・・。香穂に会えなかったら・・。 考えただけで、もういてもたってもいられなくなりました。 たとえこのまま途中で亡くなっても、とにかく香穂のもとへ向わねば....。と思い、あわててPepperdine行きの用意を始めました。 渡にも説明すると "Yes! Pepperdine!" と大喜びです。渡の顔に 「なんで早くそれをしてあげなかったんだよぉぉぉ〜。」 と書いてある感じです。渡は気持ちで動いているので、ピュアな部分で物事を考えています。よし、私の選択は間違いじゃない。と渡をみて確信を得た私。 さて、どうやって運ぶか?を考えてウィンディが一番好きな段ボール箱をもってきて、タオルを敷き、入れようとしたら 「また医者かも!?」 と思って、最後の力を振り絞って、抵抗してきました。私が泣きそうになりながら 「ウィンディ、香穂のところへ行こうよ。香穂に会おう。 ごめんね。いままで辛い思いして待たせて。いまから香穂のところに行こう!」 と言ったら、なんとウィンディが自ら箱にむかって、じっとしたので、抱き上げて箱にいれると今度は、なんの抵抗もせずに箱の中で丸まってくれました。 image 「覚悟はできた。さて、運んでくれ!」 という感じです。 ここから約7時間、600km弱の移送が始まります。 香穂には、チャットで、 「いまから出る。」 って打ったら、彼女はグループワークの最中でPCをつかっていたらしく、日本語が出てきたので、友達が 「えっ?これ何?」 と聞くので 「あっ、うちのお母さん、今からうちの猫が死にそうなので、猫つれて大学まで来るって。」 「えっ?お前の家、近かったけ?」 「う〜〜ん・・。サンノゼ。母にとっては、近いのかもしれない・・・。」 「えっ?サンノゼって今からだったら、7時間はかかるぞ。渋滞にも合うだろうし。」 「そーなんだけどさぁぁー。」 「お前のお母ちゃん、過ごすぎ。」 と言われたそうだ。 さて、ウィンディ。香穂に会えることがわかったのか、ここ一週間まとも鳴いてないのに、にゃーにゃーと鳴いています。 箱で寝るポジションが決まったら、もう動かなくなり、じっと到着を待ちます。 途中なんどもトイレ休憩。水分補給を行い、ただただ南に走り続けました。 ところが、向う途中、停車するたびに、明らかにウィンディが元気になって来ています。ご飯を食べたり、お手洗いをしたり、しっかり歩いたり。 「あんた、さっきまで歩けなかったじゃない!」 と思う私。 大学が近くなるにつれ、さらにウィンディが元気になってゆきます。 image 立ち上がって座っています。 大学の構内で香穂に電話するとすでに香穂は準備が整っていてすぐに車に走ってきました。 ウィンディに 「香穂だよ」 と言と、もう香穂の手の臭いを必死でかいでいます。 そのまま海へ。 私はウィンディが子供の頃から、ずっと海を見せてあげたかったのです。今のウィンディは、逃げる元気がないのは、わかっていますが、とりあえず規則なので、首輪をつけて海岸へ。 image 香穂に抱かれて随分意識が戻って来ています。 image 全身を香穂に預けるウィンディ。 image さて、ホテルにチェックインです。 動物OKのホテルは、モーテルのようなところしかないので、そこに宿泊。 ここでも奇跡的な事がおきました。歩けなかったウィンディが、ホテルの部屋の中を歩いて、香穂を探します。もう目が見えなくなっているようで、壁つたい、ベットつたいに歩くのですが、ベットに座っていた香穂が呼ぶと、なんとベットに自力で飛び乗ります。 えええっーーー あの自宅のベットにつけたスロープは、いったいなんだったの?? ウィンディは、臭いと声で香穂の居場所をみつけて、近寄ります。 なので香穂が、 「あのさー。今日の夕飯はTake Outにして、部屋で食べようよ。」 と言うので、 「そうね。これだけウィンディが香穂から離れなければ、レストランとかには行けないわね。香穂も動けないねー」 と笑って言っておりました。 Take Outのピザやパスタを食べていてもウィンディは、体の表面積の1ミリでも多くを香穂にすりつけようとします。 image PCで宿題を見ている香穂のジーパンにも、しっかり自分の体を預けて、安心してるようです。 image 私が近くにいって手を出すと、目が見えなくなっているので、臭いで香穂じゃないことがわかり、さらに香穂の方に体をすり寄せます。 香穂がお手洗いにいって戻って来た時に、二人でウィンディを呼んでみると歩けなかったウィンディが、すたすたと香穂の方へと歩いてゆきます。 臭いをかいで確認するとまた全身を香穂に預けて、すやすやと寝ています。 きのうまで、半分目をあけて浅い眠りだったウィンディが深ーい眠りについているようです。 やっぱり来てよかった。 香穂とウィンディは普通のつながりじゃないんだね。と思いました。 私が渡の自閉症の症状と戦っていて脱走した渡を延々と外で探している時も家ではウィンディと香穂が二人で待っていました。 香穂をかまってあげれない時は、ウィンディが香穂の支えになってくれていました。 ウィンディ自体もつらい生い立ちがあります。 Windyは、シェルター(捨て猫や迷子猫等がいる施設)からやってきました。 渡が自閉症なので、生き物を怖がらないように。命を大事にできるようにとアメリカでは、引っ越しする時にも比較的連れてゆきやすい猫を飼うことを決めました。 シェルターのイベント会場があったので、そこへ面接にゆき、私たちの家族には、多動の自閉症がいること、その姉(香穂は6歳でした)もまだ小さいこと、その環境にも耐えれる猫であること。香穂の友達も遊びにくるので、子供と遊べる猫であることが条件でした。最初は 「シェークスピア」 という名前の猫に決めましたが、大家さんと猫を飼う交渉して許可を得ているうちにこの猫には、他の飼い手がついてしまいました。 シェルターの人たちは、私たちのがっかりした顔をみて 「実は、もう一匹特別な猫がいるんだけど、あなた達、面接してみない?」 と言われました。 面接してみると人なつこくて、とにかく渡と香穂との相性がよかったのです。けど、気になったのは鳴き声。完全に声が枯れています。シェルターの方いわく 「実はね。赤ちゃんの時に飼っていた女の子(19歳)の彼氏が虐待したので、声が枯れたの。虐待で死にそうになって、我が家の玄関先に捨てられて気絶していたの。その猫をひきとって、精神的に立ち直るまで我が家で面倒をみてたの。けど我が家には、7匹の猫がいるの。子供が好きな猫だから、あなた達には合うわよ。2歳で大人の猫だし。分別もつきます。けど、大人の猫にしては、体が小さいのよ。」と説明してくださいました。 私は、 「けどね。我が家は虐待はしないけど、多動の自閉症の子供がいるので、猫にとってものんびりな環境とは言えませんよ。」 とお話したら 「大丈夫。あなた方をみていて、大丈夫だと思ったからこの猫と面接をしてもらったのよ。」 と言われて、面接部屋で散々遊んで、もうWindyにぞっこんになっていた2人は 「飼いたい!飼いたい!」 のお願い攻撃で養女に頂く事が決定。 我が家の家族になりました。 小さいときの虐待がたたってか、体も今も小さいままで、海に行った時も写真をとってくださった方に 「子猫だね。かわいいね」 とまで言われたウィンディ。現在12才。人間の年齢で80歳近いそうです。 本当に長く生きてくれたね。よく耐えてここまで来てくれたね。 疲れたドライブだったね。がんばったね。香穂にあえて良かったね。 いままで本当にありがとう。大変な我が家で良く耐えて家族みんなと仲良くしてくれてありがとう。今日は香穂と一緒にぐっすり眠ってね。