のび太と一緒に療育を受けていたMちゃん親子とバッタリ再会した。Mちゃんはのび太と同じタイプの高機能自閉症と診断されている女の子。のび太は当時パニックになると大騒ぎして号泣するタイプだったがMちゃんはパニックになると逃避するタイプだった。嫌なことがあるとその場にいられなくなる。すぐに教室から飛び出そうとする。だからいつも仲良しのミッキーマウスのぬいぐるみと一緒に療育を受けていた。「ミッキーちゃんと一緒だったら頑張る」Mちゃんの夢は「大きくなったらディズニーランドのお姉さん」になること。だから「嫌なことがあるからって逃げていたらディズニーランドのお姉さんにはなれないよ。ミッキーちゃんは何でも頑張る子が好きなんだから」なんて、いつも言われていた。そのたびにMちゃんは「ミッキーちゃんに嫌われないように頑張る」と、泣きながら療育を受けていた。しょっちゅう、逃亡、逃避を繰り返してはミッキーちゃんに連れ戻されることを繰り返していたMちゃん。だけど、いつも笑顔で明るくて元気いっぱいだった。のび太とMちゃんはタイプが似ていたため就学前の個別療育も一緒に行っていた。だんだん成長し、仲間意識も出てきた二人はどちらかの気持ちが崩れると励ましあう言葉を掛け合ったり、Mちゃんが逃亡するとのび太が「ボク、Mちゃん連れてくる!」と連れ戻したり、のび太がパニくると、Mちゃんが「大丈夫だよ。泣かないでゆっくりやればいいんだよ。M,待っててあげるからね」なんて言ってくれたりする、いい関係だった。そして、違う小学校に入学した。お母さんとは何度かいろんなところで顔をあわせたけど、Mちゃんとは4年ぶりに会った。(残念ながら、のび太は留守番していたのでいなかった)まるで別人のように落ち着いていたMちゃん。きちんと挨拶してくれたMちゃんに4年の月日の長さが感じられた。でも、全然、、違う。笑顔が全くない。4年分の成長とは違うものを感じずにはいられない。「元気?学校、どう?」と、たずねると、Mちゃんママが、耳元でささやいた。「学校、行ってないの。4年生になってから、ほとんど。 いろいろあってね~」そうかぁ~・・・いろいろあったのね。「先生と相性が悪かったのかな~とにかく、『性格が悪い』『普通はこんなことしない』とか『普通に振舞え』みたいに言われて。『普通』ってこと事態がわからない子でしょ。っていうか、自分は普通にしているのに『おかしい、おかしい』って言われ続けたら、誰だって辛いよね。だからもう、『学校に無理して行かなくていいよ』って言ったら『じゃあ、行かない』って。」うんうん。そんな辛い思いをして学校に行かなくてもいいよ。私が親だったとしても、そう言うと思う。この子たちの目標は多数派に合わせて生きることではない。少数派の考えや行動でも理解してもらえて自分らしく生きることであるはず。そのために特別支援教育なんてもので学校側に支援と配慮と理解を求めているものではなかったのか?のび太を見ていても、時々、思う。障害がある、なんてことを忘れちゃうこともある。だけどそれは、のび太が必死で多数派にあわせて生きているだけなのかも知れない。本当の気持ちや本当の考えを押し殺して懸命に多数派の真似をしているだけなのかもしれない。私たちがこの子達に求めているものはそんなことではないはず。個性的で自分らしさを失わないまま、周りに受け入れて欲しかったはずなのに。「普通」になんかならなくて、いい。でも、「周りに合わせる事」を強いてきたのは大人の方なのかも知れない。特別支援教育、なんて うそぶきながら。