あれだけコンピューターにかじりついていたベンが言い出したのは、「Dad, I have to disconnect internet」ええっ!?ディスコネクト(切断)って、インターネットが命のようなベンが何でまたそんな事を言い出したんだ?と最初はおもしろ半分に聞いていたのだが今日で3日目、 何十回と同じことを言われているうちにだんだんと具体的な問題が見えて来た。ベンが言うのは、1、ユーチューブなどの動画サイトをブロックして欲しい。2、動画サイトは脳に良くない3、コンピューターは消して、テレビや本を読むのが良い4、健康に良いものを食べる4は直接コンピューターに関係していないが、何かにつけてベンが言うことで問題を解決したいときの最後に必ず出る結びの言葉とも言える。まあ、少しコンピューターから離れることになるから丁度良いなと思い放っておいたのだが、今日になってベンは 「I am scared」と言いながら泣き出した。泣くとなると、事態は深刻だ。ベンに一体何を恐れているのかをしつこく聞き出してみると、どうやらプレイモービルに関したサイトから、問題が起こっているようなのだ。プレイモービルといえば、ベンが8歳くらいまで熱中していたプラ人形のおもちゃなのだが、点の目がかわいらしく想像力をかきたてられる楽しい遊びで、大人でも多くのコレクターがいる。話をつめてゆくと、ユーチューブで見たプレイモービルを使ったムービーの中に、問題のある内容のものがあったようで、「Children are crying」とか、「インターネット・ポリスに電話しなければいけない」などと言っていたことから、何かしらの悪い内容があった可能性がある。とにかく、ベンはトラウマになるくらいの嫌な内容の動画を見て、動画サイト、そしてコンピューターまでもを恐れているようなのだ。コンピューターに「STAY AWAY」と張り紙をし、モニターには買い物袋をかぶせてから取れないようにセロテープで貼ってしまった。何かがベンの頭のなかでぐるぐると回っているようでしまいには、「コンピューターの無い場所に行かなければならない」と言いながらソファで横になっているうちにうたた寝までしている。魂が抜けたようになってしまったベンは少しして起きると、また同じ事を言い始めた。 「ベン、コンピューターは自分で操作するものだから見たくないものがあれば、見なければ良いだけなんだよ!」と強い口調で言い、コンピューターの所へ一緒に行くと、怖いと言いながらスイッチは入れる。しばらく一緒に見ていると、だんだんと活気を取り戻してくるので、「ベン、もう大丈夫なのかい?」と聞くと、「Yeah, I am OK」とすっかり立ち直った様子でインターネットを楽しんでいる。それは、まるでお化けの恐怖に怖がる小さな子供を暗がりへ連れ出すかのようでもあった。3日間続いた6月の真夏日の後に起きた不思議な事件は、今も真相がわからないまま。隣の部屋からは、ベンが動画サイトを楽しむ音が聞こえてくる。