ベンの弟が生まれる前に、同じアパートの大きめの部屋に引っ越した。赤ちゃんが生まれると、子供用のマットレスで寝ていたベンの横にクリブを置いて、部屋は狭くはなったが、まだ体が小さいせいか余裕のある感じがしたものだ。普通のベッドで寝られるようになった頃に2段ベッドを買い、しばらくは家族揃って同じ部屋で寝ていたのだが、小学校に入る年齢になり、別の小さい方の部屋に2段ベッドを押し込んだ。ぴったりとはまったベッドは子供部屋らしくも見えたが、来る日も来る日も小さな部屋のベッド隅に置いてあるコンピューターに向かい、ベンは放課後の時間を過ごしていた。みるみる成長を遂げた体は母親の身長を超え、薄暗い部屋の奥でコンピューターに興じる姿は危険な感じさえする。今の家賃で、引っ越しは考えられない。大きくなってきたら、何とかなるだろうと思っていた予想に反し、何ともならなかった訳で、子供達を大きな部屋に戻すことに。しかし、これは気の遠くなるような作業だった。少しずつ部屋ものを出してゆき、居間の方に移動させる。スペースを作る事から始まった3週間に及ぶ壮大な計画は、ベッドの移動がメインコースとなり、勢いづいた気持のまま翌日に2人分の机を買ってセットした。日当りの良い、窓辺のデスクでベンは「I love my new room !」と言い、弟も中学になって始めて手にした自分の机の前に興奮気味に私物を並べている。大変だったけど、やって良かったなと一段落、とりあえず子供達がハッピーになったところで気が抜けてしまいそうになるが、今度は自分の仕事部屋を何とかしなくてはならない。ずたずたに散らかった部屋では頭の整理もつきにくく、忘れてしまう事や、アイディアも散漫なものになってしまうことが多い。平気な人も多いようだが、やはりある程度は片付いていないと心理的な影響を感じずにはいられない。それにしても、何か気づいては片付けものをしているという状況にも陥り、「ああ、早く元の状態に戻して普段の生活がしたい」と思う事しきり、ようやく出口が見えて来た状態だ。