コスコ(日本ではコストコと読むそう)はアメリカで始まった会員制の一般消費者向け卸売り店だが、これだけ物価高になると、普通のスーパーのものは何でも高く思えて、コスコで買ったものでなければ割安感を感じることは無いくらいの状況だ。そんなわけで、近所のスーパーで買い物をするのを極力控えて、週末に行くコスコが頼りでウチの家計は成り立っている。ただ、問題はどうしても1度に買う量が増えてしまう事。ほとんどの商品が数のまとまったパッケージになっているので、買うと同時にストックをすることになり狭いアパートでは置き場所にさえ苦労する。あまり食べない食品などは腐らせてしまうし、コスコでの買い物は、結構頭を使うのだ。そういった真剣勝負な買い物の間、ベンは本とDVDのコーナーで好きにさせているのだが、時々売られているソファの展示品にどっかりと座って本を読んでいたりすることもあって、人から干渉されない楽しい場所のようだ。1月ほど前のこと、買い物を完了して本のコーナーにベンを探しに行くと、目を輝かせて「I found classic book series」と言ってボックスに入ってセットになった小学生向きの本を差し出して来る。古くからある、子供本のスタンダードらしいシリーズはシャーロック・ホームズやハイジなどの作品が大きめの字の本文とイラスト入りで構成されている。 文章のページの隣は必ずイラストなので、絵本から普通の本への過渡期を意識した作りがベンの心を捉えたのだろうか?「買うのかい?」と訊くと「No,I don’t want to」と言うのだが、これは好きすぎて興奮を抑えきれない場合に起こる現象で、実は欲しいという事が殆どなので、「ああそう」と言いながらショッピングカートに入れる。案の定、店を出るや否や、本を手にとって嬉しそうにしているのだが、僕はベンか本当にこの本を読むのかは半信半疑でいたのだった。ところがその夜から寝る前にその本を取り出して読んでいる。何故か読んでいる本を毎日必ず学校へ持ってゆくようになり、朝にはベッドの横に落ちた本を拾い上げてバックパックにしまい込む。見ると本にはきちんとしおりが挟んであり、本の扱いが僕より格段に良いではないか。1週間ほど前には一冊目の本を読み終えた事を報告しに来た。「I finish to read Sherlock Holmes, I am going to read Heidi(ハイジ) next !」と嬉しそうに言っている。8冊セットで10ドルちょっとのまとめ買いは、安いばかりでなく、次を期待するベンの楽しみをもたらしてくれた。