私は昔、全く文章を書けませんでした。作文も手紙も日記も感想文も、全く書けなかったのです。学校で作文を書くとき、いつも白紙でした。どんなに時間をかけても、どんなに頭を捻っても、1文字も言葉が出てこないのです。学年が上がるにつれ少しは書けるようになりましたが、せいぜい数行程度。そんな状態が何年も続きました。大学受験で、志望校の受験科目に「小論文」があり、対策に困りました。他の科目は暗記で何とかなるかもしれないけど、小論文はそういうわけにいかない。かと言って、白紙で提出するわけにもいかない。私は一つの方法を思いつきました。「小論文も暗記で何とかなるのでは?」・・と。それで私は色んな本を読み、文章を暗記しまくりました。入試本番でどんなテーマが出ても対応できるように、いろんなジャンルの本を読み、新聞の社説も毎日読みました。そしてとにかく暗記。と言っても丸ごと暗記するのではなく、部分的に「これは良い表現だ」と思ったものを、頭の引き出しに保存するのです。こうして保存された表現や言葉を繋ぎ合わせて文章を書くのです。この方法を思いついて以来、私は何とか文章を書くことが出来るようになりました。入試本番の小論文もそれなりに書けたし、大学でのレポート課題も乗り越えられました。私は文章を書くのも苦手でしたが、読むのも苦手でした。書き手の意図するところを読み取ることが苦手だったし、何より活字を読むことが苦痛でした。でも「良い文章を書く為には、良い文章をたくさん読む」という方法を思いついて以来、たくさんの文章を読むようになりました。でもそれは、あくまで自分の語彙力や表現力を高める為にやってるだけで、文章を読む楽しさというのは今でもあまり身に付いていません。こうして、頭の引き出しに保存されているたくさんの表現や言葉の中から適切なものを探し出す作業をしながら、このように文章を完成させているんです。そんなこと言うと、まるで私は他人の言葉を盗用して書いているかのようではないか・・いえ、もちろんそんなことはなく、ちゃんと自分の考えを書いています。うーん。なんて言うんだろう。基本的には自分の考えを自分の言葉で書いていますが、それだけで文章を完成させるのは難しいんです。元々は1文字も書けないほど文章力に難があり、きっとその困難は今も根底に残ってます。だから書いている途中で詰まってしまうことがあります。そんな時には頭の引き出しの中から適切な表現を探す作業をしなければならないのです。まだまだ続く・・・・