覚えられない仕事で雑務をやらないでいたことについて怒られた後、雑務に意識を向けるようになった。
上司には上司にしかできない仕事があるので、部下としては雑務をこなさなければ気配りの足りない人と見られても仕方がなかった。
そう納得した以上、私に出来ることは、雑務をいかにしてこなすかを考えることである。
人から注意されたことで傷つくことがあったとしても、納得できた点については受け入れる姿勢を見せることを忘れてはならないと思っている。
注意されたことについて反発しても、労力の無駄であり、何も得るところはない。
意識して思ったのだが、アスペルガー症候群の私にとって、仕事に注意を向けながら雑務に注意を向けることは非常に難しい。
同時に二つ以上のことに意識を向けることができないのだ。
仕事に熱中していると、雑務を忘れてしまう。
怒られてから辞めるまで短い期間しか残されていなかったので、私にもできそうな二つの雑務にのみ注意することにした。
業務日誌に雑務について書いたメモを挟み、就業中見続けた。
結果、本来の仕事が多少滞ったが、閑散期であったため何とか支障なくこなせた。
これが繁忙期であれば、雑務をこなさなければならないことが頭で分かっていても、実際に雑務に注意を向けることは難しかっただろう。
行なった雑務は、以下の二つである。
・ポットに水を足す
湯や茶を飲んだ後は、必ずポットに水を足すようにした。
減ったときだけ足そうとしても忘れてしまうので、毎回必ずポットに水を足すことにした。
また、内部の線ぎりぎりのところまで水を足しても、上司はさらに水を足すことが判明したので、内部の線より上まで水を足すことにした。
水の入れすぎはポットに悪いのではないかなどと、考えてはいけない。
・ゴミを捨てる
ゴミ収集日をメモし、前日にゴミを出そうと試みた。
その結果、皆、ゴミ収集日に出していないことが判明した。
ゴミが溜まった時点で、ゴミ捨て場に運んでしまうのである。
業務用のゴミを一般家庭用のゴミとして出していいものか常に疑問であったのだが、皆、そういったことは気にしないようだった。
たったこれだけのことに注意を向けることが難しいということが、定型発達者には理解できないかも知れないが、私にとっては、メモをして細心の注意を払わなければできない行為である。
「やればできるのにどうしてやらなかったの」
などと言われてはたまらないので、予め断っておく。
努力のかいあって、退職日には、上司に成長ぶりを褒められた。
悔いの残らない仕事ができて、よかったと思う。