優秀なナースがいるとシステムがなかなか改善されないという話
元記事を拝読して、論文もついでに読んでみた。内容は元記事の如く。
でもこれってHarvardのBusiness Shoolの人が書いたんだよな。Medical Schoolじゃなくて。現場の人っつうよりは管理者層になる人らの系列が書いた論文なんだよね。あるいは、管理者層の人らに対して「貴院の運営にはこういう問題(注)があります」と進言して金にする「こんさるたんと」稼業に進もうとする人らのね。
(注)たとえば接客がねずみ王国のやりかたを見習ってないとかね。ちゅうちゅう。
そういう人らにとっては、現場でなんとかしてしまう面々ってのはどっちかというと敵なんだろうなと思う。将来には病院管理者やなんかの経営者を目ざす面々がこういう思考をして、まわりにイエスマンと尻ぬぐいばっかりを置かないよう自戒するってのは歓迎だけれど、コンサルタントのニッチ拡大を目指した意図があったら嫌らしいなと思う。
どういう現場でもそうだろうけれど現場ってのは恒久的なもんじゃない。絶えず小さな破綻を生じ続け、誰かがその綻びを繕い続けてなんとか維持していくのが現場ですから。いや、仕事ってそういうもんじゃないんですか?優秀なナースが居るとシステムがなかなか改善されんかもしれんけど、居ないとシステムは崩壊するんじゃないかな。改善されんシステムでも動かないシステムよりは遙かにマシだと思うが。
それは医療の業界にいると当たり前の認識なんじゃないかと思う。私ら医療の業界がとくべつシステム運営に疎いというわけじゃなくて。人体もたとえば血小板やなんかが絶えず血管の微少な破れを補修し続けてないとたちまち皮下出血だらけになるわけだし。そういう日常のメンテナンスが破れた身体(ときには精神)を世話するのがなりわいだと、「とりあえず目前の綻びを繕っておく」ことに関してはBusiness Schoolの人らより敏感なはず。
加えて言えば、「下手に手を加えてかえって事態が悪くなる」のも臨床にはよくあるお話で。「カイゼン」に関してはまず身構えることにしている。止めてはいけないシステムなら、とりあえず動いているうちは手をつけないというのも美徳の一種じゃないかと。