親が変わると子どもの姿も変わってくるということは、子ども関係の仕事をしている人なら誰でも感じていることだと思います。
情緒の不安定が見られるお子さんのケースは診療室でもたくさん経験がありますが、親御さんによってその反応は様々で、治療経過もそれぞれお子さんによって大きく違いが出てくるものです。
母子関係や親子関係が情緒不安の原因になっているのでは、と思われるお子さんの場合、親御さんにお子さんとの関係を見直す機会を作っていただくことを提案したり、心理検査などを通して具体的に母子関係の問題を指摘することもあります。
そのときに、どれくらいお母さん(お父さん)の心に響いたかが、その後の経過を大きく左右すると常々感じています。
ご家庭で(ご夫婦で)よくお話をされて、これこれこういう風に対応を変えてみました、というような報告が出てくる場合には、お子さんにも確実に変化が起こるものです。お忙しい営業マンのパパが、仕事の合間に、子どもへの対応を聞きたいと足を運ばれるようになる姿を見ると、もうこのおうちは大丈夫だな、と思えることもあります。逆に、いじめの対応にご両親は仕事で忙しいと言う理由で、おばあちゃんが学校相手に出かけていらっしゃったケースでは、二次障害の治療が難航したこともありました。お母さんの過保護や介入のしすぎがお子さんを苦しめていることを指摘した途端に、お母さんの猛反発に合ったこともありました。
子育ては、それぞれのお子さんの親御さんのライフスタイルを反映しますので、医療者がとやかく口出しするものではないと思うのですが、お子さんがつらい思いをしているときに、改善の糸口につながるものを求めようとされている親御さんは、小さな助言や指摘であっても、それが心に響いて、何かしら子育ての姿勢が変化するものです。
変化するときには、親子共にお互いに苦しい思いをすることもあります。そういうことも当然わかったうえで、変化を受け止める準備を私も常に心がけながら、小さな子育てのアドバイスができたらなあと思っています。