仕事でミスをした。
一般常識の欠如によるミスである。
職場で上司が外出しているとき、電話に出なかったのだ。
会社営業中に電話に出ないなんて、ありえない。
お客様からのお電話だとしたら、出なかったらどうなるか分かるはずだ。
営業時間に電話に出なかったら、お客様の信用を失ってしまう。
あまりにも非常識だ。
小学生にも分かることが、どうして分からないのか。
こんなことまでいちいち言わないと、分からないのか。
怒られて、泣けてきた。
いちいちもっともであるからだ。
私には電話に出ない理由があった。
いつもは上司が電話に出るので、私は出なくてもいいのだと思い込んでいた。
また私は電話で失敗経験をしてきているので、私などが電話に出ると、かえって会社のためにならないような気がしていたのだ。
しかし、一般常識から考えれば、出なければならないのは当然だった。
どうしてこの当然のことができなかったのだろう。
理由の一つに、アスペルガー故の類推力の弱さというのがあるかもしれない。
実は前の会社では電話応対をちゃんとしていたのだ。
仕事として与えられていたから、多少電話で嫌な目にあっても、不得手だと自覚があっても、精一杯のことをした。
今回との違いは何か。
前の会社では、「電話応対をしろ」と言われていたからした。
今の会社では、「電話応対をしろ」と言われていなかったからしなかった。
今回だって、出ようと思えば出られる能力はあったはずなのだ。
でも出る気になれなかったのは、会社営業中に電話に出ないということがお客様にとってどのような意味を持つのか、きちんと理解していなかったからだと思う。
前の会社で電話に出ていたことと、今の会社で電話に出ることが、別の意味を持つことであるように思い込んでしまったのだ。
アスペルガーは、一度理解したことはきちんとできる。
でも理解の仕方が独特で、定型からすれば「同じ仕事」でも、「別の仕事」として理解してしまう。
電話応対一つとっても、会社が変われば一から覚え直さなければならない。
A社の電話応対と、B社の電話応対は、それぞれのやり方があるはずだから一から覚え直さなければならないと思ってしまうのだ。
確かにそれぞれのやり方は大事だし、それぞれのやり方に慣れてしまえば、アスペルガーは的確な電話応対ができるようになる。
しかし各会社に合ったやり方を学ぶ以前のことで、それよりもっと重要な一般常識があることに、アスペルガーは気づかないのだ。
今回の電話応対についても、根本には同じ「お客様の立場に立ったらどうなるか分かるはず」という一般常識による大前提があったのだけれども、私はそのことに気づけなかった。
このことは、定型には理解しづらい。
類推力の弱さや関連づけの独特さから、一般常識の欠如したことを繰り返してしまうアスペルガーは、定型からすれば、努力不足や仕事への熱意が欠如していると思われてしまう。
アスペルガーだと上司にカミングアウトしていても、そうなってしまうのだ。
アスペルガーの特性は、本当に理解されづらいのだと思う。
こういったミスを防ぐためには、どうしたらいいのだろうか。