今日は久々に書籍紹介。
自閉症の子どもへのコミュニケーション指導―「関係」を育て「暮らし」を支援する (教育の課題にチャレンジ)青山 新吾 明治図書出版 2005-03 売り上げランキング : 893869 by ヨメレバ
著者の青山新吾氏は通級指導教室を中心に岡山で長年教員として支援教育に携わってきた方、
現在はノートルダム清心女子大学の講師をされている。
自閉症児におけるコミュニケーションの意味
自閉症の子供へのコミュニケーション指導というと、まず思い浮かぶのはABAやSSTという方も多いだろう。
しかし、この本では、ABA的な手法も、SSTのようなコミュニケーションスキルの指導手法についてもほとんどでてこない。
具体的手法がなくていったい何が出てくるのかというと、「コミュニケーション」というものそのものを自閉症児の中にどう形作っていくか、そのための支援はどうあるべきかといったことがその内容だ。
1章では青山氏が支援教育に関わるきっかけからスタートし、支援においてどういうことを大切にしてきたかといったこと。2章はケーススタディ形式で、パニックや自傷など含め、さまざまなトラブル例がでてくるが、その問題を解消・解決すべく氏がどういう道筋で考え、どういう対処をしてきたのかといったことと、その分析が綴られている。
さらに3章では支援において何をどう観察、デザインしていくかといったことのポイント整理。4章ではよりよい特別支援教育を模索するための方法論と続く。
ケーススタディ部分で出てくる子どもたちは知的障害のある子もいればない子もいる。
事例では、青山氏の観察ポイントといったものもかなり参考になるだろう。そして発語がなかったり知能検査ではかれなくても、自閉症児は実は豊かな内面や高度な言語理解力をもっているという前提のもとでの氏の様々な対応が綴られいることも注目すべきポイントだと思う。
この本は支援教育に携わる教職員向けの本だが、4章以外は親御さんや支援者、行政関係者にも十分参考になる内容だと思う。
また、現代の子育てに欠けやすい部分があらわにされている本だとも思う。
療育の手法を選ぶ前に考えるべきこと
青山氏がこの本で強調するのは「関係性と暮らし支援する」ことだ。
自閉症児者はコミュニケーションの障害があることで他者との関係性を構築しにくい面はある。しかしだからといって関係性が不要な訳ではなく、むしろ容易に構築できないからこそより重要で、それぞれの家族のスタイルで日々の暮らしの中で関係性を構築するための努力をすること、そしてそれを黒子のように支える支援が必要だという青山氏の主張は非常に納得のいくものである。
前の記事でもちょっと出したが、療育の方向性として「将来にむけて自由度を上げる」といったところも重要な視点だと思う。
ケーススタディに垣間見える青山氏が用いる手法は非常にバリエーション豊富だと思うが、この本は具体的な支援の手法を学ぶための本ではない。
個別の療育において何を目標にしていくか?支援において何を目標にしていくのか?といったことをどういった道筋で検討していけばいいかといった内容である。
「寄り添う」とか「向き合う」という言葉は福祉や支援の世界でよく聞く言葉だが、真に寄り添う、真に向き合うとはどういうことなのか?ということを考えさせられる本でもある。
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