自閉症の子どもと暮らす家づくり(14)

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Nice!

前回書いたとおり、家探しを始めてすぐに、我が家が希望する条件に合致する建売住宅は、市場にほとんど存在しないことが分かってきました。その理由の第一は、そういう条件に見合った家を建てるには一回り広い土地面積が必要で、そうすると建売り住宅の売り出し価格が一般的な売れ筋の価格帯よりもかなり高くなって「売れない物件」になってしまう、ということでした。でも実際には、それだけが理由ではありません。もしそれだけが理由なのであれば、あえてニッチな市場を狙って一定量の建売り住宅が供給されてもおかしくありません。でも実際には、こういう「土地の広い建売り住宅」を建てるのは、業者側にとって「おいしくない、儲からない」という事情があり、だからこそ「供給されない」ようなのです。たとえばここに、400m2くらいの土地があったとします。もしこの土地を3つに分割して、大きめのゆったりした4LDK+駐車場2台という家を建売りで建てて売りに出しても、割高感が出てまず売れません。結局、値下げして売らざるを得ないことになります。それなら、最初から4分割して、3LDK+駐車場1台というコンパクトな4軒の家を建てた方が、値ごろ感が出て売れやすく、しかも3軒ではなく4軒も売ることができる、ということで、売り上げの合計もずっと大きくなることがほとんどです。一般的に、家が小さければ小さいほど、売り出し価格の坪単価は割高となります。これは、もちろん建築単価自体が割高になるということもありますが、それ以上に、家を小さくしてたくさんの人に売ったほうが土地としての「活用密度」、付加価値が上がり、投資不動産として利回りが良くなっていく、という傾向があることも見逃せません。いわゆる投資マンションがことごとくワンルームマンションばかりで、ファミリー向けの物件を投資対象にする業者も投資家もほとんど存在しないのも、これと同じ構造です。このような「不動産に投資する側・売る側」のメカニズムが働くために、建売りの企画というのもほとんど常に、「その土地で可能な最も細かい区画に分けて、コンパクトな家を建て、割安感を出してできるだけ多くの人に売る」といったものになってしまうわけです。都心ではなく郊外にいけば土地が安くなるから広い建売りが選べるのでは?と思ったりもしますが、実際にはそうではなくて、郊外で家を探す人はそのぶん予算を下げて探しているので、結局同じような割安の企画の建売りばかりが流通する結果になってしまうわけです。もちろん、「4LDKで駐車場2台」という建売りも、探せばあるにはあります。でもそういった物件はたいてい、「駅から遠い」のです。それは結局、建売りというのは「売れる値段帯」が決まっていて、その範囲内で「広い家」を建てようとすると、どうしても地価の安い「駅から遠い家」になってしまう、というからくりがあるわけですね。