昨日、「発達障害者支援法施行10年を経て」というテーマで、お話をする機会がありました。
他人に聴いていただくことで、じぶんじしんが、「こんなふうに感じて、こんなことを考えていたのか」という気付きがあり、整理をすることができました。専門的な検証といえるものではなく、イチ親が感じている肌感覚にもとづく雑感に過ぎませんが、以下にまとめてみました。
やはり10年の流れは大きい。社会の変化、経済環境、技術の変化、いろいろなものが影響しあって、発達障害者をとりまく状況は変化をしています。
発達障害者支援法(条文)の制定の当初は、「まず、ここに身体/知的/精神障害に加えて、『発達障害』という障害があります」ということを公に認知して、支援の必要性を国が認めた」という意義が最も大きかったわけです。そして、この10年で、「発達障害」という障害の(少なくとも言葉レベルでの)認知は進みました。また、障害者自立支援法の支援対象の障害類型にも認められて、具体的なサービスも受けられるようになりました。
当事者のエンパワメントという意味でも、「わたしは発達障害の当事者です」とカミングアウトする人たちに出会うようになりました。「当事者会」が全国で増えてきていることも、希望を感じる動きです。
発達障害者支援法が力点をおいた、早期発見し早期に療育につなげることも10年で進みました。また、教育現場でも、発達障害のための加配をつけることなどはふつうのこととなりました。特別支援教育に関わる教員で「発達障害って何?」という人は、さすがにいなくなったでしょう。
大学などの高等教育機関でも、発達障害のある学生の存在が認知されて、支援の必要性が認識されて、(遅ればせながら)具体的な取組みも先進的な学校では始まっています。これも、10年前には考えられなかったことです。
ここまで語ってきて、気になることは、「大人になってから」のことです。
発達障害者支援法は、「生涯にわたる支援」を実現するための法律ですが、就労については条文も少なく、具体的な支援を定義するものではありません。
発達障害のある人が、社会に出て、それまでの「教育を受ける立場」から、「じぶんが働く=サービスを提供する立場」になる時の大きな変化に適応できずに、居場所が確保できなくなってしまうことについては、今も有効な策がうたれていないのだと思います。
現在の社会状況のなかで、ほとんどの分野で、業務が高度化・複雑化し、高いフレキシビリティやコミュニケーション能力を素早く求められるようになってきています。そこから、はじき出されて、容易には職を得て定着することができなくなっている。
──しかし、これは、発達障害のある人に限った話ではありません。若者にとっての就労・定着の難しさに対する支援策のなかに、「発達障害のある人」に合わせたメニューが当たり前のように盛り込まれることが望まれています。
また、障害者差別解消法が来年4月から施行されます。これの職業分野での具体化として、改正障害者雇用促進法が同じく来年4月から施行されます。この中で、「合理的配慮」の提供義務が定められています。これも、発達障害に限定(特化)したものではありませんが、当然に発達障害のある人にはその人にあった「合理的配慮」が求められることになります。
ここまで考えてきて、お伝えしたいことは、
・発達障害者支援法は、発達障害のある子どもが成長し、大人になってから社会に適応できるよう、「成長過程の支援」を主に保障していく意義がある。
・社会に出てからの、就労支援や就労定着は、若者支援や障害者雇用促進の(発達障害に特化したものではない)より広い支援のなかに「きっちり発達障害者の存在が位置づけられて、個々のニーズに合わせた」支援が受けられるようになるとよい。
ということです。
現在、「発達障害の支援を考える議員連盟」が、発達障害者支援法の改正について提案をまとめているとお聞きしています。どのようなものが出てくるか期待して見守りたいと思います。