夏休みを頂いて長崎の実家に帰った。二日間カヤックで遊んでいた。実家の庭で膨らませて、目の前の海に放り込む。庭先が海なのでそういう楽しいことができる。むろんカヤックなど始めてである。素人が通販でインフレータブルカヤックセット(救命具とパドルとポンプつき)を買って乗るなど無謀もいいところかもしれないが、それでもひっくり返りもせず楽しめた。それほどに故郷の海は穏やかである。実家は小さな岬のたもとにある。岬の向うからちょっとした川なみの速さで潮が流れているし、その潮や波風にえぐられて岬の突端がちょっとした崖になっているしで、子供の頃は岬の向うに回ってみることができなかった。今回の休暇でこの岬をカヤックで越えることができて、向うはどうなっているのだろうという子供の頃からの疑問がようやく解決できた。三十数年来の胸のつかえがおりたような気がした。天候にも恵まれた。初日は潮の速さに挫けて、岬の向うへまわる勇気が出なかった。ところが二日目には風が逆になり、岬をめぐる潮の流れがほとんど止まった。幸運だった。たしかに子供の頃の記憶でも、そういう風向きの日があることは覚えているのだけれども、でも珍しいことではあるのだ。せいぜい私が動いたのは、海沿いに歩くことができれば1時間足らずで移動可能な距離ではあった。本格的なカヤック乗りの人にはお笑いぐさな小冒険なのだろうけど、楽しかった。こういう楽しい休暇も若手が増えてNICUを留守にできる期間が長くなったからこそである。その点、感謝至極である。もうすこしお土産も奮発するべきだったかもしれない。