Automated Answering Systemsの恐怖

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Nice!

アメリカの国民健康保険の問題はいつも選挙の切り札でありながら、なかなか実現しない事項の一つだろう。僕のようにフリーランサーの境遇にある人は医療保険を買うにも高くてまるで手が出ないのが現状だ。フリーランスのファミリー向け保険は安いものでも月に600ドルは下らないのだから、たまらない。会社や組合に属していれば少しは負担が軽くはなるものの、給料から天引きされる金額は結構な額でもある。とにかく高い保険料は、医療費自体が高いのに加え、薬の高騰、医師に対する訴訟問題も関係していると言われているが、保険を通さないで貰う請求書が1回の検診のみで300ドル、予防接種が1本125ドルというのもどうにかならないものかと考えてしまう。幸い障害者には救済措置が在る為、ベンはすべての医療に関して基本的に無料である予定だったのだが、今回はちょっとややこしいことになってしまった。ピーナッツ・アレルギー用の緊急注射器を購入するため処方箋をもらい薬局へ行くと、保険が下りないとコンピューター越しに知らされる。今まで問題の無かった手続きが何故か突然通らなくなったというのだ。メディケイドと呼ばれるこの制度は市の運営する低所得者と高齢者、障害者のための保険なのだが、無料または殆ど無料に近いため医療費の節約に詐欺をしようとする人も多く、チェックが厳しいことからちょっとした手違いでストップされてしまうことがあるとはよく聞いていた。今回は以前加入していた民間保険の情報が間違って登録されたことにより、公共の保険サービスがストップされてしまったケースで、これは民間の保険が最初に支払いをするという優先順位があるからなのだ。解決には相当な努力と時間と運が必要なことは問題の起こった瞬間に感じていた。アメリカで生活をしたことのある人なら、誰でもわかってもらえる話だとは思うが、この国では「どうにもらちが開かない」ということが多々起こるのだ。つまり、誰も自分に関わる仕事ではないとして、たらい回しになってしまい、誰にも助けてもらえない状態がずっと続いてゆく。まず、元の保険会社に電話をして、契約期間の証明書を取り、それを市の保健局に送るのだが、受理されたのかプロセスをしているのかもわからない。2週間が経ち電話をしてみても、相変わらずの自動音声対応で、生きた人間と喋ることさえ、不可能なのだ。ちなみに、この証明書を送るというプロセスも自動音声の案内によるものだった。しびれを切らし、時間のあるときにいくつかの大きな病院に併設されている事務局へ行くと、そこでも上で書いたのと同じ電話番号を渡され「私たちにはどうにも出来ないのでここへ電話してください」といわれる。「これ、既に電話した番号なんですが」と言っても「らち」が開かずに渋々外へ出て電話をすると、何故かもう一つ書いてあった番号の方に生身の人間が出てくれるではないか。結果はその場ですべてプロセスが行われ、その時点でサービスが有効になったわけだが、ただ待っているでけではいつになってもどうなるか判らないというのもまた正しいということも良くわかった。早速薬局に行き、薬を受け取って何とか200ドルの支払いを避けることが出来た。