こんな子

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Nice!

「こんな子、いなければよかった」「この子さえいなければ、我が家は何の問題もないのに」「この子は、うちのガンです」・・・診療の中で、お母さんの口からこんな言葉が出てくることがあります。お母さんたちは、本当はこんなことを思ったり言ったりしたいわけではないはずだと思いたい。いろいろな事情があって、どうしようもない気持ちから言ってしまったのかもしれない。普段は、そんな気持ちは表に出さず、自分の心にしまっているのに、相談の中で思わず訴えてしまいたくなったのかもしれない。こんなことを言ったからといって、お母さんだけを一方的に責めるわけではありません。それでも、たとえどんな事情があったとしても、お母さんたちには、お子さんをどうか愛情深くはぐくんでほしい。存在を否定されて育つということがどんなにつらく厳しいことか。愛情のない親子関係がどんなに悲しいものか。どうかどうか、愛情を持って育ててほしいと願います。「こんな子、産まなければよかったと思う。でも、自分が産んだ子だから仕方がない。どうしようもない。」淡々と語るお母さんにどう声をかければよいのでしょう…言葉を失ってしまいます。どうか心の元気を取り戻し、お子さんに優しく言葉をかけてあげられるお母さんであってほしい。障害があっても、困難があっても、子どもといる時間に喜びを見出すことができるお母さんであってほしい。現実の厳しさを前にして、自分の無力さが情けなくなってしまうことがあります。理想的な愛情あふれる親子関係など簡単に作れるものでもありません。それでも、私たち大人は、子どもたちのためにできることを探していかなければならない。子どもたちにとって何が必要なのかという大事なことを見失わないようにしなければいけないと思います。