セント・パトリックス・デーは昼間からバーでお酒を呑む沢山の人たちを見る、僕にとってとても嬉しい日なのであるが、これは酒を呑むのが好きな人にとっては理解しえる感覚ではないだろうか。夜を待たずして昼間から盛り上がるこの日は、何だか街中がお祭りになったようで、外部から見ていても楽しい気分にさせられる。実際アイリッシュの方々の呑みっぷりは凄まじく、僕など到底及びもつかないだろうし加わって楽しむ勇気もないのだが、お酒を呑む場の雰囲気というのは楽しそうで良い。ベンは将来お酒を飲むようになるのか?というのは楽しみでもあり、心配でもある。もっとも本人はチキン・ウイングやオニオン・リングなどのバー・フードが好物ということもあり、「21才になったら一緒にバーに行くかい?」と訪ねると「Yes, I go to the bar and eat chicken wing and drink a beer」と答えている。自閉症者に関する飲酒についてサーチをかけてみると、検索されるのはほとんどが母体の飲酒と自閉症の関係についてで、なかなか当事者の飲酒についてのレポートが少ないのだが、YouTubeに面白い投稿があった。アスペルガーの息子さんを持つ母親が、息子さんが飲酒したときの様子を語っており、「お酒を飲むと、社交的になるのですが酔っているようには見えません」と言うもの。下にはたくさんの書き込みがあり、当事者自らが「リラックスできる」とか「1杯でクラクラになる」とか「すぐに眠くなる」などとあった。ある意味常に興奮している状態にあるので、リラックスできるのかもしれないが、とても興味深い。専門の方から見れば、飲酒を勧めるなんてとんでもないと怒られてしまいそうだが、僕はベンがきらびやかな電飾の飾られたバーでカラオケを歌ったりするのを見たい気もする。先日演奏をさせて頂いたニュージャージーのレストランでは、8人程で食事をしていた中年の自閉症者らしきグループを見かけたのだが、注意深く見てみると人によってはグラスワインなどを飲んでいる方もおられる。殆ど会話をすることもなく一緒に食事をして、音楽を聴いて、ただそれだけなのだが、そこにはお酒を介した楽しい雰囲気があった。