課長バカ一代 1 (1) (KCデラックス)野中 英次 / 講談社スコア:NICU部長の肩書きを頂いてしばらく経つ。最初は「代行」とついていた。そう付いていてもいちおうみんな私の言うことは聞いてくれるし役職手当も頂けたので文句を言う筋合いでもないのだが、こんな場末のNICUがそんなたいそうなものかと多少思わないでもなかった。ちなみにキミは管理職なんだから時間外手当は無しねと言われたら速攻で辞めるつもりだったのだが(月9回もタダで当直できるものか)、当直手当は出世して以降もきちんと頂いている。ありがたいことである。さるさる日記であれこれ愚痴を書き始めた頃は下っ端だったのだが、なんだか出世してしまった。出世させてくれたついでに部下もつけてくれたらなお善いのだが、それは高望みというものかもしれない。病院の上の方でも求人は熱心にしてくれていることだし。ありがたいことに応募があったし。それにしても我が身をつれつれ振り返るにつけ、こんな俺がNICU部長なんて名乗ってて京都の新生児医療はほんとうに大丈夫なのかと、まあ認可病床数や年間入院数としては京都でも大きい方のNICUであるだけに、多少危惧するところも無いわけではない。しかしそれは京都のみなさまに失礼なことではある。ということでせめてものお詫びにと、今後このブログでは愚痴はなるだけ封印することにする。武士は喰わねど高楊枝。寒い辛いを言わないのがさむらい。だから今後はあんまり寝てないとか忙しすぎるとか休みがないとかなるだけ言わないことになるけれど、それで小児科医療の現場が楽になったという根拠とは解釈しないでください。そんな誤解を生んだら別の方面にご迷惑ですから。ということで今後の目標は本作の主人公八神和彦である。彼のように、常に平然と、自分を失わず、池上遼一の劇画の主人公みたいなきりっとした表情で(地がそんなに二枚目かはともかく)いたいものだと思う。たとえアホなことばっかりしていても。部下がみんな休暇をとってしまってオフィスにひとり取り残されたクリスマスイブ、八神は課の業務が自分をとばして廻っていることに気付き、自らを振り返って「そうか、俺は何にもしてないんだな」とつぶやく。なんでそんな仕事をしない奴が課長なのかはともかくも、人間としてこんな境地にはそうそう至れるものではない。この男は本当にバカなのだろうか。そうとう大物なのではないか。追記:前田仁さんのような優秀でツッコミ力のある部下を募集中です。