マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になったジョン ウッド / / ランダムハウス講談社ISBN : 4270002484著者の業績をけっして貶める意図ではないが、おそらく、この凄い人も、ただ単に休暇で訪れたさきの貧しさ悲惨さだけでは動かなかったと思う。心を痛めつつマイクロソフトの仕事に復帰して、そのまま北京でのマイクロソフトの販路拡大に奔走し続けたことだろう。彼を動かしたのは、貧困ではなくて、その貧しい中にあって飢えたように学んでいるこどもたちの熱意やぎらぎらした欲求の貢献がかなり大きいんだろうなと思った。当直室で本書を読みつつ娘のことを考えたのだが。こうやって知識欲に目を輝かせながらネパールの山奥で英語の本を読みこんで育ってきた面々と、これからの人生で出会っていくことになるんだろうなと。彼らに太刀打ちできるほどの、そういうぎらぎらした生命力を彼女も備えているかどうか、ちょっと心配にはなっている。些事ながら、著者は中国におけるビル・ゲイツ氏の不適切なふるまいにほとほと幻滅した様子で、それもまた著者がマイクロソフトを辞める遠因となっている。どうしてあれほどの大企業が、トップに据えた自閉症者にジョブコーチの一人もつけられなかったのか不思議でならない。