カナータイプの自閉症。

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Nice!

続き。S君は、知的障害を伴う自閉症(カナータイプ)で全く言葉を話さず、人とも関わろうとしません。ある意味、「自閉症」という言葉の通りの子。だから障害の発見は早く、診断前から、「様子がおかしい・・」と周りの人達は気付いていたようです。以前、S君のお母さんからのメールで、アスペルガーは言葉が話せるからいいね・・というような事を言われ、その時私は「言葉が話せるからいいなんて、とんでもない!」と思いました。私はむしろ、カナーのほうがマシと思っていました。私は30年以上も正体の分からない違和感と闘ってきました。やっと障害が判明して安心したと同時に、「なぜ今まで誰も気付いてくれなかったんだ、もっと早く気付いていたらこんなに辛い経験をせずにすんだのに!」・・・・その悔しさで気が狂いそうにもなりました。障害が判明した後にも、一見正常な私は周りからの理解を得られず。息子も「自閉症」という言葉の印象とは真逆の子なので、息子が自閉症だと誰も信じてくれません。見えない障害の困難に何度もぶつかりました。だから私は、周りの理解を得やすいS君が羨ましく思えたのです。でも、今はそうは思ってないです。S君のお母さんは結婚前から学校の教師をしていて、結婚後も出産後も続けていて、仕事をとても楽しんでいるようでした。なのにある時、突然仕事を辞めました。その後、旦那さんの実家に引っ越すことになり、数年前に建てたマイホームを手放しました。理由は私は知りませんでした。少し前に、S君のお母さんからこんなメールが届きました。 『私の夢は、いつの日か、Sに「お母さん」って呼んでもらうこと。  その夢を叶えるためなら、私は何でもする。』私は理解しました。仕事や家事を今までのように続けていたら、Sくんと向き合う時間が取れないから。。仕事を辞めた理由、両親と同居することになった理由はおそらく、S君と向き合う時間を増やす為だろう・・と。懸命に向き合うことで、いつの日か我が子の口から「お母さん」という言葉を聞けるのならば、大事な職や家を手放すことも惜しまない。そこには、周りに気付いて貰えるとか貰えないとかの問題は存在しない。言葉を話せない自閉症児を抱える母親の努力や手段は、私達の想像を遥かに超えるものだと思う。私は、S君のようなタイプの自閉症の人を、「気づいて貰い易いからマシだ」などと考えるのはやめようと思いました。・・とは言っても、アスペルガーがカナーよりも理解を得られにくい、という難点を抱えていることは事実で、実際私もそのことには本当に大変な思いをしているわけで・・・・カナーにはカナーの、アスペルガーはアスペルガーの大変さがあり、安易に比較はできないということを思いました。