当事者研究とは何か?
まず当事者研究とは何か?といえば障害や疾病の当事者による当事者についての考察、分析などのことを指すことが多い。広義にはもうちょっと意味がありそうだが、少なくとも障害や病気がからむ分野での意味はそういうところだ。
病者、障害者個々人の自分の状態に対する考察などもあれば、障害や疾病に起因する困り事に関する対策を模索するものもある。当事者の視点で病気や障害に何かの特質や共通性を引き出すといったタイプのものもある。タイプはさまざまだ。
;そういう意味で、このブログも当事者研究的要素をかなり含んでいるといったことなる。
;さて、「当事者研究」という言葉で検索をかけると、Wiki以外で真っ先に出てくるのが「べてるの家」である。
知ってる人は知っているが知らない人は知らない(当たり前だ)ので一応簡単に説明すると、べてるの家とは北海道にある統合失調症者の共同生活施設で、昆布や昆布の加工品などの地産品やオリジナルグッズの製造・販売もしているし、さまざまな社会活動もしていて、当事者活動が特に有名である。本も数多く出版されており、いくつか読んでみたがとてもユニークで面白い。
(関係ないが、べてるの家の昆布はとても美味しかった。)
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べてるの家の当事者研究の中心となるのは自分の状態を自分の言葉で表現するといったもののようである。
さて一方発達障害関係での当事者研究はというと、まあ有名なのが綾屋五月さんとかしーたさん、小道モコさんだろうか。とにかく書籍ですら数がやたら多いので把握しきれないといった状況でもある。
発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく) 綾屋 紗月,熊谷 晋一郎 医学書院 2008-09-01 売り上げランキング : 94962 by ヨメレバ
実のところ当事者研究というのは特段のスタイルがない。当事者が自身と自身のもつ疾患、障害のことについて何かネタをもってきてなんらかの考察をし、研究と言い張れば研究なのである。
当事者研究の効用
当事者研究というのは、当事者が当事者のことを考察するわけであるから、当然のことながらある程度自分自身を客観的に見る必要がある。
そこで「あー、けっこうこういうときって結構やばいね~」とわかれば自己管理に結びついたり、治療の継続に結びつきやすい。さらにいえば、自分の持つ疾患なり障害なりを受容することにも繋がる。これが当事者研究の効用の主たるところだろう。
べてるの家の取り組みは当事者研究の上記のような効果をうまく使って当事者のQOLを上げるのに成功している例だと思う。
統合失調症の場合、病識が薄いために治療を継続しにくかったり、自己管理がしにくかったりすることがQOLを下げやすい要因であるから、当事者研究をすることによって病識を維持しやすいといったメリットは大きいのかもしれない。
発達障害における当事者研究を考える
さて、こtこで発達障害者の当事者研究について考えてみよう。
正の側面
「私はこうである」を冷静に見て把握していくことは悪くないかも知れない。
できること、できないこと、苦手なこと、得意なことを冷静な目で分別する。それは自分で自分自身に過剰な負荷を欠けてしまうことを抑制するのには役に立つだろう。
自分の感じ方、思考、行動のクセを詳細に解体して見ていくのも悪くない。他者との比較が容易になるという面はある。そしてこのあたりは専門家の研究のネタになることもあり得るので、ネタの提供を通じて発達障害の解明につながるやも知れない。
負の側面
いまのところ負の側面なんてものについて言及したの見たことがないのだが、私はこれは馬鹿にできない問題だと思う
発達障害者が発達障害の特性について「「こうである」という結論を出すとその結論に縛られやすい。
その上「自分はこうである」という結論を「発達障害は治らない」という一般に流布している説が補強して、「治らないからこれは仕方がない」という結論に至りやすいというわけだ。
これではQOLの向上に寄与しないどころか希望がわかなくなりかねない。もっと言ってしまえばどん詰まり感の醸成にしかならない。
あれこれ自分のことを知るために勉強したあげく、社会的支援の必要性を訴える方にとても熱心になる人少なくないのは「どん詰まり感」を社会的支援の拡充で打破しようとするのがその理由なのかもしれない。
じつのところ「発達障害は治らない」というのはかなりあやふやであいまいなものだ。発達障害そのものが診断モデルで定義されているため、定義で示されたものはありがちな表現形でしかなく本質的なものでない可能性は結構高い。
特性…と言われるものはたくさんあるが、それに翻弄されていない部分を多く持つ発達障害者も結構いることから考えても、「治らない範囲」は現在特性と呼ばれているものよりかなり範囲を縮小できる可能性もまた高いと私は思う。
結論:発達障害者の場合当事者研究には慎重を期すべし
結論は上記のとおりなのだが、ちょっと具体的にしておこう。少なくとも下記のようなことは念頭に置いておいた方が良いだろうと思う。
特に自閉症傾向のある発達障害者は「疑問をもったことについてあれこれ調べる」ということにハマリやすい傾向がある。「自分はどうすればいい」をスタートに、「発達障害って何なんだろう?」と、いろいろ調べ、勉強しまくるひとは少なくない。
上記のような点に気をつけておかないと迷宮にハマりやすいということには気をつけておく必要があるだろう。
<おまけ> 自分の取り扱い説明書づくりってのも一部で流行っているようであるが、これも当事者研究でき菜ものでアリ同様の危険性をはらむと思う。
とまあ、こんなところで本稿終わり
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