さて、前回までのエントリで、「福祉社会」を維持し、誤解や偏見から福祉によるサポートを敵視したり、私的制裁(=いじめ)によってそのサポートを無効化したりする人たちを作り出さないためには、福祉を受けている人たちをとりまく状況や困難さの実態について「社会の理解を広め、深める」不断の努力を続けることが不可欠だということを書いてきました。上記のような「私的制裁」の圧力がかかる背景に「不公平感」があるわけですが、現在の一般的な福祉スキームでは、単に「社会の理解」が深まっただけでは完全に埋められない「不公平感」が生じる領域があります。また、いつも使っているグラフによるモデルを見てみましょう。このグラフ、左の方にギザギザがあります。このギザギザは、福祉制度から提供されるリソースの量が、段階的認定によって決められていることによって生じています。要は、このグラフは福祉制度が「軽度」「中度」「重度」(それに加えて「認定なし」)という3段階の認定制度になっているような状態を表していて、そのような制度化では、「重度から中度」「中度から軽度」「軽度から認定なし」のそれぞれの境界域で、福祉制度から得られるリソースががくっと落ちるために、最終利得もがくっと落ちるケースが生じ、それがグラフ上は「ギザギザ」として表現されているわけです。この「ギザギザ」の存在によって、大きく2つの問題が生じます。1つは、「認定が軽くなって、得られる福祉制度からの支援の量が減らないように」ということで、障害などによって生じる困難の軽減のための努力をわざと怠るなどの「困難軽減に対するマイナスのインセンティブ」が働くことです。もう1つは、境界域で「軽い方」に認定され、「右側」に位置する人から見ると、同じ境界域で「重い方」に認定され、「左側」に位置する人が「福祉のサポートを受けすぎ」、そして自分達が「もらえなさすぎ」という状況に見えることから不公平感が生まれ、これまで説明してきたような「私的制裁」や、同じ弱者であるのに認定の段階ごとにいがみあうような「弱者内の分断」が生じることです。これらは、ここで想定している福祉の制度が「段階的認定制度」と「それぞれの段階について、より重い認定のひとに対してより手厚いサポートを与える制度」が組み合わせることによって生じている構造的な問題だ、といえます。ここからは、この2点の問題を解決するための方法を考えていきたいと思いますが、まず誰でも思い付くのが、段階的な認定制度をやめて、連続的でスムーズな認定制度に変えればいいんじゃないか?というアイデアだと思います。次回は、このアイデアが有効かどうかについて、まず検討を加えていきたいと思います。(次回に続きます。)※既にまんがの内容とは別のポイントでの議論になっていますが、いちおうまんがのリンクも貼っておきます。 聲の形 第1巻・第2巻・第3巻・第4巻・第5巻大今良時講談社 少年マガジンKC